効果抜群と謳ってくれる芸能人、スポーツ選手、ドクターを引っ張りだすメーカーの気持ちもよく分かる。効果に色が付いているわけではないし、強化されるのがプラセボ効果だろうが結果良ければ全てよし。要するに効果の合計が大きくなればそれでよいのである。有名人に払うお金がない場合には、誰か分からないが化粧のノリが良さそうな美女や、膝枕でにんまりする疲れた中年の登場となる。

 一般向けの講演を頼まれることも多いのだが、今回のようなお話しは聴衆の受けがあまりよろしくない。考えてみれば当然である。睡眠の講演会を聞きに来る方の多くは眠りに関する悩みを持っており、快眠グッズの1つや2つは購入したことがあったり使用中であったりするわけだから。

 最近では方針変換して「プラセボ効果込みで効果があればいいんじゃないですか」とまとめてみたりもする。しかしそれはそれで「研究者がなんたる言いぐさか」「このような講演を聞いてからではもう遅い!」とこれまたお叱りを受けることがある。といったわけで、最近は講演会でも快眠グッズのお話しは一切触れないことにしているのである。

 それにしても恐るべし、プラセボ効果。睡眠だけではない、抑うつや不安など精神症状に対してはプラセボ効果が非常に大きく、睡眠薬や抗うつ薬の新薬治験で実薬が苦戦を強いられることも稀ではない。一方で、睡眠や精神現象にはそれだけ心理的要因が関わっている証でもあり、大きなレジリアンス(回復力)を持っているのだ。快眠グッズはその心強い援軍とみるべきだろう。

 次回は睡眠に与えるプラセボ効果についてもう少し掘り下げてみたい。

(イラスト:三島由美子)(画像クリックで拡大)

つづく

三島和夫

(イラスト:三島由美子)

三島和夫(みしま かずお)

1963年、秋田県生まれ。秋田大学大学院医学系研究科精神科学講座 教授。医学博士。1987年、秋田大学医学部医学科卒業。同大助教授、米国バージニア大学時間生物学研究センター研究員、米国スタンフォード大学医学部睡眠研究センター客員准教授、国立精神・神経医療研究センター睡眠・覚醒障害研究部部長を経て、2018年より現職。日本睡眠学会理事、日本時間生物学会理事など各種学会の理事や評議員のほか、睡眠障害に関する厚生労働省研究班の主任研究員などを務めている。これまでに睡眠薬の臨床試験ガイドライン、同適正使用と休薬ガイドライン、睡眠障害の病態研究などに関する厚生労働省研究班の主任研究者も歴任。『8時間睡眠のウソ。日本人の眠り、8つの新常識』(川端裕人氏と共著、集英社文庫)、『睡眠薬の適正使用・休薬ガイドライン』(編著、じほう)などの著書がある。近著は『朝型勤務がダメな理由』。

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