大部分の快眠グッズはボランティアに数日から数週間程度試用してもらい感想を聞いてみた、という宣伝法だ。「一般の方○○名に試していただいたところ、△△%の方が現在お使いのものより熟眠できたとお答えになりました!」「いやー、これを使い始めてから朝の目覚めが良くてね-、肩こりもなくなってスッキリだよ、ワハハ(個人の印象です)」

 お古と新品を比較するのもフェアじゃないが、新しい「快眠」グッズと聞いただけで睡眠感が良くなったと感じるのが普通だ。一種のプラセボ(偽薬)効果なのだが、睡眠についてはこれがバカにならない。もともと日本人は「新商品」に弱いのだが、睡眠の質が悪くグッズに期待を寄せている人の場合は尚更プラセボ効果が出やすい。薬効のはっきりしている睡眠薬でさえ、プラセボ効果に勝つのが大変なこともある。

 銀座のショップで売れなかった5千円のスカーフが、値札を3万円に替えたとたんに売れたという都市伝説を聞くことがあるが、快眠グッズについても同じことが言える。この値段なら素材も良いだろう、開発にお金がかかったのだろう、効きそうだ! と信じてもらうことがとても大事なのである。

 快眠グッズにプラセボ効果を超える快眠効果があるのか私は知らない。少なくとも新薬開発のように厳密な方法で睡眠に与える影響を確認したグッズに出会ったことはない。ボランティアを対象に使用前後で脳波測定をするなど効果検証の努力をしている企業もあり好感が持てるが、残念ながら方法論的には突っ込みどころが満載である。

 快眠グッズの挙げ足を取るのが今回の趣旨ではない。新薬開発と同じ努力を求めるつもりもないし、必要もない。書きたかったのは快眠グッズの効果はプラセボ効果+アルファであり、おそらくアルファはかなり小さいこと。でも、合計の快眠効果が大きければユーザーは十分に満足できるし、メーカーはそのためのいろいろな努力をしているということ。信じる者は救われるのである。

 逆にいったん効果に疑いをもたれたら市場から退場するしかない。睡眠薬(実薬)ですら「これはプラセボだよ」と言って渡されると「やっぱり効きませんでした」と回答する患者が少なくない。いわんや……である。

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