かつて稲作で栄えた米国サウスカロライナ州の沿岸部。一帯をうるおす川の頭文字からACE流域と呼ばれる湿地帯には、豊かな歴史と自然が今も息づく。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

米国南東部 湿地帯が抱く歴史と自然

かつて稲作で栄えた米国サウスカロライナ州の沿岸部。一帯をうるおす川の頭文字からACE流域と呼ばれる湿地帯には、豊かな歴史と自然が今も息づく。

文=フランクリン・バローズ/写真=ビンセント・J・ミュージ

 今から数百年前に稲作で栄えた、米国のサウスカロライナ州。その南東部に位置する湿地帯には、豊かな歴史と自然が今も息づいている。

 アシュプー川、コンバヒー川、エディスト川という3本の川が流れるこの一帯は、その頭文字をとって、ACE流域と呼ばれている。ここでは原生の自然に比較的近い環境に、豊かな生態系が保たれている。

稲作が生んだ独特な景観

 陸地と陸地の間に、大小の川や湿地帯が血管のように張りめぐらされた一帯は、平らな島々が集まった群島のようにも見える。ACE流域のこうした景観を生んだのは、アメリカ独立戦争のはるか以前から行われてきた稲作だった。
 最も初期には、幅の狭い沼地の水をせき止めて貯水池を造り、しかるべき時期に水を流して低い土地を灌漑した。後になると、潮汐に伴う淡水の動きを利用する複雑なシステムも使われるようになったが、この方法が可能な地域は限られていた。

 灌漑するには、まず沼地を堤防で囲い、川の水が入らないようにする。次に取水・排水用の門を堤防に設置。これにより、田植えの際には排水し、その後は稲の成長に合わせて水量を調整することができた。9月の収穫期には田から水を抜く。この灌漑システムによって大規模な稲作が可能になり、多くの農園主の懐を潤した。

 それから長い歳月を経た今も、ACE流域は昔ながらの景観をとどめている。4カ所ある州立の野生生物管理区には、ハンターや釣り人、バードウォッチャーたちがやって来る。
 現在ACE流域で作られている主な作物はトウモロコシだ。畑は夏の間はずっと水を抜いてあるが、秋になると、未収穫のトウモロコシを残したまま畑に水を入れる。カモがそのトウモロコシを食べに集まり、ハンターがそのカモを捕るのだ。

 ACE流域を管理するサウスカロライナ州自然資源局の生物学者ディーン・ハリガルの案内で、流域の森を歩いた。川を見下ろす小高い丘に、なかば倒れかかったオークの古木が生え、周囲には石棺がいくつか置かれていた。
「あの湿地の縁に見える水路は運河でしょう。収穫した作物を川へ運べる程度の幅があったはずです。この地で充実した生活が営まれていたことがわかります」

※この続きは、ナショナル ジオグラフィック2014年11月号でどうぞ。

編集者から

 米国の特集では珍しい、静かでしっとりとした空気感をたたえた写真が印象的。南東部にこんなにも自然豊かな湿地帯があるとは、新たな発見でした。筆者いわく、このACE流域にあるベア島の野生生物管理区は、「米国のどこよりも野生動物の種類と数が豊富」とか。この辺りでは幽霊やピューマがいるという噂があるそうですが、両方いてもおかしくなさそうな雰囲気です。(編集M.N)

この号の目次へ

翻訳講座

ナショジオクイズ

キリン科の動物は次のうちどれ?

  • シマウマ
  • オカピ
  • トムソンガゼル

答えを見る

ナショジオとつながる

会員向け記事をお読みいただけます。

ナショナル ジオグラフィック バックナンバー

ナショナルジオグラフィック日本版サイト

広告をスキップ