第80回 デレーチョの爪痕

 その結果、ミネソタだけでも、およそ東京都と同じ面積に匹敵する約2000平方キロメートルの森がダメージを受け、2500万本以上の木が倒されたというわけだったのです。

 森の木々たちが目の前で引き裂かれていったあの日の光景は、決してぼくの脳裏から消えることはないでしょう。

 ジムとぼくを乗せたセスナは、ウィルダネス保護区の上空をゆっくりと飛び続けていました。

 痛々しい爪痕を残した森とは異なり、しずかに波打つ湖面のなめらかさが対照的でした。

 クリフハウスに泊まった最初の夜、あんなにも穏やかな姿を見せていた自然が、その数日後にはこの有様だなんて……。

 創造と破壊は表裏一体。

 新しい木が芽吹くのも自然の奇跡ならば、無数の木を一瞬で倒してしまうのもまた、自然の奇跡的な力なのかもしれません。

つづく

大竹英洋

大竹英洋(おおたけ ひでひろ)

1975年生まれ。写真家。一橋大学社会学部卒業。1999年に米国のミネソタ州を訪れて以降、北アメリカ大陸北部に広がる湖水地方「ノースウッズ」の森に魅せられ、野生動物や人々の暮らしを撮り続けている。主な著書に『ノースウッズの森で』(「たくさんのふしぎ傑作集」)、『春をさがして カヌーの旅』(「たくさんのふしぎ」2006年4月号)、『もりのどうぶつ』(「こどものとも 0.1.2.」2009年12月号)(以上、すべて福音館書店)などがある。また、2011年3月NHK BSの自然ドキュメンタリー番組「ワイルドライフ カナダ ノースウッズ バイソン群れる原生林を行く」に案内人として出演。近著は「森のおく 湖のほとり ノースウッズを旅して」(月刊 たくさんのふしぎ 2012年 09月号)
本人によるブログは「hidehiro otake photography」