第110話 覚悟なさい、これも定めよ。

 ここは最初にスノーモービルを停めた場所から、少し南の方角になる。

 木々が密集する林のなかで襲いかかったオオカミたちが、ムースを走らせて、林の中から湖上に追い出した場所だ。

 広いスペースを利用して取り囲み、一斉に飛び掛って、致命傷を負わせたに違いない。

 そして、重傷を負ったムースは、再び林の中へと戻ろうとして、その途中で倒れたのだろう。

 オオカミたちが食べた残骸が、湖岸の縁のブッシュのなかに散乱していた。

 この周辺には、5つほどの罠が仕掛けられている。

 スティーブと共に、ブッシュを掻き分けて、残骸の様子を確認すると、そこもまた、そこだけ時間が止まったかのように、何1つ変わっていなかった。

「食べに戻って来ていないみたいね……」

 トーニャが、息をひそめるように、小さな声で言った。

「たぶん、感づかれたな……」

 スティーブが、チッと舌打ちしながら言う。

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