私は20代の後半から牧場で働いていたことがあり、そこで多くの動物たちの死と直面したが、だからと言って、そういったことに慣れているわけではない。

 やはり、命あるものの死というのは、私の胸を締め付ける痛みとなる。

 だから、トーニャには申し訳ないのだけれど、私は心のどこかで、

「神様、罠にかかっていませんように……」と、手を合わせてしまうのだった。

 そんな次の日。

 一気に湿った空気が流れ込んできたのか、空には雲が立ち込めていた。

 スティーブが迎えに来て、私たちは2台のスノーモービルでその場所へと向かった。

(写真クリックで拡大)

 しばらく凍った湖上を走って、西側の林の手前にスノーモービルをとめた。

 そこからは歩いて林の中へと入っていく。

 スティーブは、銃を背中に回して先頭を歩いた。

 銃は護身用でもあるが、罠にかかっているオオカミが、まだ生きているようだったら、それで安楽死させるためでもある。

 私はスティーブのすぐ後ろにつき、その銃を見つめながら歩いた。

 林の奥に入って行くと、ムースの毛が大量に散らばっている場所へと出た。

 最初にオオカミたちがムースに襲いかかった場所である。

この連載の前回の
記事を見る

この連載の次の
記事を見る