少しずつかじらせてあげていた骨は、また次にソルティーにあげることにして、私は倉庫の隅に戻すことにした。
ロッジに戻ってくると、重い長靴と防寒服を脱いで、それらを地下のストーブからの煙突が貫いている2階の床の周りに並べた。
煙突の近くの床はとても暖かく、湿った服などがすぐに乾くうえに、次に着るときに暖かい。
その並べた服などの横に、私も寝転がった。
まるで韓国のオンドルやサウナ室の床のように、冷えた腰や背中を暖めてくれる。
そうして、しばらくごろりと寝転がっていると、ガサガサという雑音とともに無線の声が聞こえてきた。
「ヘイ! トーニャいるかい?」
スティーブの声だった。
下の階でトーニャが無線に応え、雑音に阻害されないように、ゆっくりと話す2人の声に、私は耳を傾けた。
「この前仕掛けたオオカミの罠を、一度見に行かないかい?」
スティーブがそう言うと、
「そうね、そろそろ罠にかかっていてもいい頃ね」と、トーニャが応えた。
「じゃあ、明日の午後はどうだい?」
「いいわね。分かったわ!」
そんなやり取りが聞こえて、私は1階に降りてみると、トーニャは少し興奮気味で、
「さて、何匹かかっているかな~」と、手もみをしながら微笑んでいた。
もしもオオカミが罠にかかっていたら、スティーブやトーニャたちにとっては、嬉しい臨時収入となる。
けれど、私は少し違っていた。
「そうだね~、罠にかかっているとイイね」と言いながらも、気持ちがまったく乗らない。
なぜならば、私は動物の死に向き合うほどの、強い心を持っていないからだ。