第9回 眠気に打ち克つ力 その3 ―知らぬ間に膨れあがる寝不足ローンにご用心

 一方、認知機能テストの結果はと言うと、2つのセッションで全く違いは無かったのである。眠気があろうがなかろうが、数字と記号合わせでケアレスミスを多発する、モニター上で動くターゲットを追跡しようとしても上手く捉えられないなど、いずれのセッションでも認知機能は明け方に向けて一直線に低下していったのであった。

 では、コーヒーを飲んだ場合はどうだろうか。カフェインは眠気を軽減するだけではなく認知機能の低下を防ぐという報告もあれば、いや認知機能は低下したままだというものもあるなど、残念ながら一定の結論は出ていない。コーヒーの力を過信するのは禁物だろう。

 今回の話のまとめである。生活をしていれば十分な睡眠時間を確保できない時期もある。睡眠不足によって判断能力やパフォーマンスが低下するのも避けがたい。しかし、自分自身が睡眠不足に陥っている危険性を認識して、適切な予防策をとることは可能である。運動やカフェインなどを使った一時的な眠気覚ましは事故防止の根本的な対処にならないことは是非ご記憶願いたい。

 また、睡眠不足が慢性化している人は眠気をうまく自覚できなくなることが知られている。たまに眠気が強くなるから自覚できるのであって、毎日眠気が強ければそのことに違和感を感じなくなるからだ。居眠り運転も危機感が薄れた時に起こりやすいので要注意だ。

つづく

『8時間睡眠のウソ。
日本人の眠り、8つの新常識』

著者:三島和夫、川端裕人

睡眠の都市伝説を打ち破り、大きな反響を呼んだ三島和夫先生の著書。日々のパフォーマンスを向上させたい人はもちろん、子育てから高齢者の認知症のケアまでを網羅した睡眠本の決定版。睡眠に悩むもそうでない方も、本書を読んでぜひ理想の睡眠を手に入れてください。
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三島和夫

(イラスト:三島由美子)

三島和夫(みしま かずお)

1963年、秋田県生まれ。秋田大学大学院医学系研究科精神科学講座 教授。医学博士。1987年、秋田大学医学部医学科卒業。同大助教授、米国バージニア大学時間生物学研究センター研究員、米国スタンフォード大学医学部睡眠研究センター客員准教授、国立精神・神経医療研究センター睡眠・覚醒障害研究部部長を経て、2018年より現職。日本睡眠学会理事、日本時間生物学会理事など各種学会の理事や評議員のほか、睡眠障害に関する厚生労働省研究班の主任研究員などを務めている。これまでに睡眠薬の臨床試験ガイドライン、同適正使用と休薬ガイドライン、睡眠障害の病態研究などに関する厚生労働省研究班の主任研究者も歴任。『8時間睡眠のウソ。日本人の眠り、8つの新常識』(川端裕人氏と共著、集英社文庫)、『睡眠薬の適正使用・休薬ガイドライン』(編著、じほう)などの著書がある。近著は『朝型勤務がダメな理由』。