第9回 眠気に打ち克つ力 その3 ―知らぬ間に膨れあがる寝不足ローンにご用心

 普段の生活では週末に借金返済をすることで睡眠不足の悪影響を軽減しているわけだが、忙しくて週末の休みが取れないときにどうするか。目の前の仕事をフラフラになりながらやるか、睡眠を確保して能率よく片付けるか、その選択は個人の考え方次第である。キレイ事を言っていられない場合も多いだろう。しかし、危険作業や運輸など眠気や集中力低下が人命に関わる仕事に従事している人々については後者の発想であるべきだ。実際、過密勤務のバス運転手が引き起こした痛ましい事故も記憶に新しい。

 この研究結果では、眠気の強さと認知機能の低下との間に異なったトレンドがあることにも注意する必要がある。眠気は一定程度強くなると頭打ちになるが、認知機能は睡眠不足の蓄積に応じてドンドン低下するのだ。このような眠気と認知機能の乖離こそがヒューマンエラー(事故)の大きな原因となる。

 通常我々は眠気の有無を睡眠不足のセンサーとしているため、下手に眠気だけが軽減されるとかえって事故が起こりやすいのだ。これに関連して筆者らはある実験を行ったことがある。若者に徹夜をさせ、深夜から明け方にかけて細かな注意力を必要とする幾つかの認知機能テストを何度も繰り返し実施したのだ。

 若者には徹夜試験に2回に参加してもらった。1回は静かにデスクワークをさせ、もう1回は定期的に眠気覚ましの軽運動や会話を許した。その結果、眠気覚ましのあるセッションでは明らかに眠気は軽くなり気分も良好に1晩を過ごせた。一方、静かに過ごしたセッションでは明け方の眠気を堪えるのが大変で、苦しい夜を過ごすことになった。この違いは経験的にもご納得いただけるのではないだろうか。

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