File6 日本発、次世代の緑の革命 芦苅基行

第3回 食料危機を救う緑の革命はまた起きるのか

「私たちのコンセプトは土着のものを改良して、その土地に返すというもの。だから商売をするつもりはなく、つくったイネの品種の権利もフリーにするつもりです。その権利をどこかの企業が持っていくのではないかという懸念はありますが、それがアフリカの零細企業でそのイネを採用することで雇用が生まれて生活が豊かになれば、それはいいのではないかと思う。先進国の大企業などに持っていかれないように対策は考えないといけませんけどね」

 もうひとつは「オールジャパン」で行うこと。いまや日本国内には遺伝子研究者が何人もいる。粒や枝分かれなど収量に関する遺伝子は解明しているものの、芦苅さんの専門は浮きイネを中心とした背丈の遺伝子であり、病害や害虫などの遺伝子は専門にやっている人が別にいるのだから、彼らもプロジェクトの一員になってもらってオールジャパンで一丸となって問題に取り組みましょう、というわけだ。

「私が勝手に立ち上げたプロジェクトですが、いろいろな専門分野の人が関わってくれればよりいいものができるはずです。それにかつての緑の革命も日本人の技術が大きく貢献している。イネのIR8と同様に広く利用されたゲインズというコムギの品種がありますが、そのゲインズの親となったのが日本の農林10号という品種なのです」

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 大正末期に岩手の農業試験場で交配によってつくられた農林10号は第二次大戦後、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)の資源収集の一環として有用と思われる品種に選別され、アメリカに持っていかれた。それをアメリカの育種家が交配させてつくったのがゲインズなのだ。「大きなプロジェクトに発展したら難しいけれど、できるかぎり日本人の気持ちでやりたい」と語る芦苅さんたちのプロジェクトは、日本の育種家が培ってきた技術の潮流の中にある。

 ならば、そうした日本人の技術と思いが込められたWISHがアフリカの食料不足を補うミラクルライスとなって、2050年の危機を救う「第2次緑の革命」を起こすことを私たちは期待してよいのだろうか。