クリフハウスよりも、キャッスルの最上階よりも高い位置から見るノースウッズ。

 湖や川、沼や湿地など、地図の記号でしか見てこなかった、この世界の詳細かつ鮮明な姿が、窓の外に広がっていました。

 暗い色から明るい色まで、何種類もの草や木が地表を色とりどりに覆い、なかには、地図には載ることのない、ビーバーのロッジやダムの姿も見えました。

 カヤックで湖を漕ぎ、森をさんざん歩いてきた上で、さらに空を飛んでみると、これまでの視点が立体的に重なって、自分がどんな世界を旅していたのかが、手に取るように分かる気がするのです。

 スタジオに近づいていくにつれ、森はさらに深くなり、細い道路沿いに見える小屋以外に、建物は見当たらなくなりました。

 いくつもの湖や湿地を超えていくと、やがて、嵐がもたらしていった被害の様子が徐々に見えてきました。

 眼下に広がるその光景は、想像を絶するものでした。

 地面を覆い尽くす無数の木々が、マッチ棒のようにすべて横倒しになっているのです。

 奇妙だったのは、ドミノ倒しのように、倒木たちがほとんど同じ方向を向いて横たわっていることでした。

 まるで地を這う巨大な生物が、波のように押し寄せてやってきたかのようです。

 ぼくは言葉もなく、窓にへばりついて、ただじっとその光景を目に焼き付けていました。

つづく

大竹英洋

大竹英洋(おおたけ ひでひろ)

1975年生まれ。写真家。一橋大学社会学部卒業。1999年に米国のミネソタ州を訪れて以降、北アメリカ大陸北部に広がる湖水地方「ノースウッズ」の森に魅せられ、野生動物や人々の暮らしを撮り続けている。主な著書に『ノースウッズの森で』(「たくさんのふしぎ傑作集」)、『春をさがして カヌーの旅』(「たくさんのふしぎ」2006年4月号)、『もりのどうぶつ』(「こどものとも 0.1.2.」2009年12月号)(以上、すべて福音館書店)などがある。また、2011年3月NHK BSの自然ドキュメンタリー番組「ワイルドライフ カナダ ノースウッズ バイソン群れる原生林を行く」に案内人として出演。近著は「森のおく 湖のほとり ノースウッズを旅して」(月刊 たくさんのふしぎ 2012年 09月号)
本人によるブログは「hidehiro otake photography」

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