スタジオで片付けを手伝っていたあるとき、ジムがぼくに言いました。

「これから、飛ぶことになってるんだ。一緒に来るかい?」

 いきなり「飛ぶ」と言われても、何のことか分かりませんでした。

 どういうことか聞き直してみると、ジムはパイロットの友人に頼んで、小型飛行機を飛ばしてもらうことにしたのだそうです。

 ラジオからは連日、嵐のさまざまな体験談や、バウンダリー・ウォーターズでのレスキューの状況などが伝えられていました。

 しかし、結局のところ、嵐の全体像まではうまく伝わって来なかったので、ジムは自分の目で確かめることにしたようでした。

 飛行機に乗るのは、ジムとパイロットだけらしく、まだ席に余裕があるので、ぼくも一緒に来ないかと誘ってくれたのです。

 状況を把握したぼくは、もちろん「いきます!」と答えました。

 こんな機会はジムと一緒でなければ、決して訪れなかったことでしょう。

 車に乗ってイリーの町外れにいくと、フェンスで囲まれた滑走路のわきに、倉庫みたいな待合室と、それ以上に無機質な格納庫が並んでいるだけの、ちいさな飛行場がありました。

 友人のパイロットは、ジムと同年代ぐらいのおじさんで、先についてすでに飛行機の準備を済ませていました。

「いつもジムを乗せて飛ぶんだ。ドアを外して、身を乗り出すようにして撮影したこともあるよ。ナショジオのカメラマンはクレイジーだからな!」

 挨拶ついでに話を聞くと、彼は仕事で飛んでいるという訳ではなく、あくまで趣味としてパイロットの免許をとったのだそうです。

 後に分かったことですが、ノースウッズでは飛行機で飛ぶことを趣味にしている人は結構身近にいて、そういう人たちと知り合いになっておくことは、撮影をする上でも、とても大切なことなのです。

 立ち話も手短かに終えると、ぼくたちはさっそく4人乗りのセスナに乗り込みました。

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