File6 日本発、次世代の緑の革命 芦苅基行

第1回 組み換えと異なるもうひとつの遺伝子技術

遺伝子を利用した交配のしくみ。品種Aに品種Bの遺伝子を組み込むケース。(画像提供:芦苅基行)(画像クリックで拡大)

 生物を交配させると親の遺伝子をそれぞれ50%ずつ受け継ぐ。上記の図のように品種Aに品種Bのある遺伝子を取り込みたい場合、1回の交配では品種Aと品種Bの遺伝子が半々になるため、新品種F1に何度も品種Aを交配させていくのだが、同じ親から生まれた兄弟が顔も体質も違うように、同じ品種を交配させてもどの遺伝子を受け継ぐかは株ごとに異なる。従来の交配では、かけ合わせてできた品種に目的の遺伝子が受け継がれているかは育てて比較してみないとわからないし、それも視覚や味覚での判断になるので確実ではない。よって、優良と思われる株を広く選び何通りもの交配を行って見極めていく必要がある。

 しかし遺伝子を分析すれば、苗の段階でどの株にどの遺伝子が受け継がれているかがわかるので、目的の遺伝子を受け継いだ株を選抜して交配させることが可能。つまり、極端な話、遺伝子の分析技術さえあれば誰でもイネの性質を正確に判断でき、ねらった性質をもつ品種により早くたどりつける。つまり、早くて確実なのだ。

 芦苅さんは遺伝子の分析と育種を併行して行うことでそれを実証している。そして、この技術を持って食料危機問題に取り組もうとしているのだ。

「日本を一歩出ると、美味しいものどころか満足に食べられない人がたくさんいます。世界では飢餓やそれに関する病気のために、毎日2万5000人の人が命を落としているといわれている。私がこの研究を始めたのも世界の貧困問題がきっかけです。この問題を日本人の得意技である交配によって解決していきたいんです」

 それが目標だと語る芦苅さんは、どうしてイネの遺伝子研究を志し、新たな品種を開発するまでにいたったのか。その経緯を伺っていく。

つづく