File6 日本発、次世代の緑の革命 芦苅基行
第1回 組み換えと異なるもうひとつの遺伝子技術
「遺伝子組み換え自体を否定はしていません。ただ、反対派も多いことを考えると、世界中どこでも受け入れられる方法を用いた方がいい。なにより私は、自分の目で見極めて、より優良な品種をつくりあげてきた日本の育種家の方々をリスペクトしています。今まで世界中のコメを食べてきましたが、味覚に自信がない私でも日本のコメは世界一美味しいと思う。だから、単に新しいことを始めるのではなく、これまで培ってきた世界一のイネの栽培技術の流れに組み込んでいくべきだと考えているのです」
日本では明治36(1903)年に本格的なイネの品種改良が始められた。大正10(1921)年には交配による初めての品種「陸羽132号」がつくられ、昭和31(1956)年にはコシヒカリが登場している。コシヒカリは品質に優れていることから全国的に人気になったが、いもち病に弱い。そこで、いもち病に強い品種を交配することでコシヒカリBLという品種を開発、平成12年に登録された。いま、新潟のコシヒカリはこの品種である場合が多い。このように日本では今まで700以上の品種が開発され、そのうち約300種類が全国で栽培されている。
日本の技術はイネにかぎったことではない。モモにせよメロンにせよ、日本ではより美味しく、栽培しやすいものにするため、育種家の手によってさまざまな作物が改良されてきた。その精度たるや、世界一だろう と芦苅さんは断言する。
ただ、このようにイネのすぐれた性質を判断するには、育種家には熟練の技術が必要なうえ、その判断も完璧ではなく、度重なる試行錯誤が必要とされていた。
「日本の食の未来」最新記事
バックナンバー一覧へ- File8 食べる喜び 中川明紀
- 最終回 小さい頃から大好きだった祖母の手づくりコンニャク 後編
- 最終回 小さい頃から大好きだった祖母の手づくりコンニャク 前編
- File7 日本の食品ロス 井出留美
- 第3回 年間500万トンを超える食品ロスを減らすには
- 第2回 食品ロスを助長する根深い日本の食品消費文化
- 第1回 コメの生産量と同量の食品が日本で廃棄されている
- File6 日本発、次世代の緑の革命 芦苅基行
- 第3回 食料危機を救う緑の革命はまた起きるのか
- 第2回 なぜイネで次の緑の革命を目指すのか
- 第1回 組み換えと異なるもうひとつの遺伝子技術
- File5 食べ物と日本人の進化 馬場悠男
- 第3回 「病気を生む顔」になる食べ物とは
- 第2回 食べ物で顔はこんなに変わる