File6 日本発、次世代の緑の革命 芦苅基行

第1回 組み換えと異なるもうひとつの遺伝子技術

「遺伝子組み換え」とは改良したい品種に特定の遺伝子を組み込む技術。遺伝子自体を操作し、まったく別の生物種の遺伝子も入れられる。たとえば、美味しいが病害に弱いイネに、病害に強いトマトの「病害に強い遺伝子」だけを導入することで、美味しくて病害にも強いイネをつくるというものだ。対して遺伝子を利用する交配は、同じように遺伝子を組み込むことを目的とするが、品種改良のやり方は従来の交配と変わらない。たとえば、美味しいが病害に弱いイネを病害に強い遺伝子をもつイネにかけ合わせて、美味しくて病害に強いイネをつくる。

イネの花。外に飛び出している細い部分は雄しべ。(写真クリックで拡大)

「日本では通常8月になるとイネの花が咲きます。私の研究室では、そのタイミングを見計らって、数百種ある水田のイネからあらかじめ選んでおいた品種同士を交配させます。だから8月は寝る間もない忙しさなんですよ」

 最近ようやく落ち着いてきたと笑う芦苅さんに、実際に交配の方法を見せていただいた。花が咲く寸前の株を根ごと水田から抜き出し、その穂先を43度のお湯に7分間つける。雌雄同株のイネは花が咲いた時に自家受粉を行うが、お湯につけることで雄しべが繁殖機能を失うので受粉ができなくなる。そこへ掛け合わせたい品種の花粉を受粉させて土に戻すことで、2つの品種から成る新品種が生まれるという仕組みだ。

交配を行う温室(左)。夏の気温はゆうに40℃を超える。花をお湯につけて咲く寸前にまず受粉する側の雄しべの繁殖機能を失わせる(右)。(写真クリックで拡大)
雄しべの繁殖機能を失わせた花に、別の花の花粉がつくようにして交配を行う。
花粉が飛ぶ様子。