大阪市立自然誌博物館の林昭次学芸員(古脊椎動物担当)は、大阪出身で、実は幼少期から、この博物館に通い詰めていた。
「うちの母親はよくこの博物館の近くで友達とお茶してまして、その間、僕は博物館にボーンとぶち込まれてたと(笑)。そのせいか、恐竜の研究をしたいという気持ちは子どもの頃からあったんです」
林少年は、のちに自分が研究することになるとは思ってもいなかったステゴサウルスの展示を見上げながら、目を輝かせていたわけだ。
さらに、生物の組織を見ることについても、林さんは子どもの頃から、関心があったという。
「実は、母は臨床検査技師で人間の組織を見る仕事でした。職場にも連れていってもらって、顕微鏡を見て、生物の構造を見るのは子供のときから興味があったんです」
恐竜研究への憧れと、組織を見ることへの興味。
長じた林さんは、なにか「仕組まれた」かのように恐竜の骨の組織学、ボーン・ヒストロジーと出会った。そして、その「方法」を日本の古生物界に本格的にもたらすことになった。
これは恐竜ではなくても、ありとあらゆる脊椎動物化石に応用できる強力な方法なので、林さんはもてる技術をステゴサウルス以外にも当然のごとく活用している。