第4回 骨の化石を切れば、ここまでわかる

 恐竜の化石を切って微細な骨の内部組織を研究する。

 その結果、恐竜の成長速度をはじめ、外見からは分からないことが多くわかる。林さんは、ステゴサウルスの背中の板が、スカスカで防御には役立たないこと、その一方で、血管が張り巡らされていて、放熱には役だった可能性が高いこと。さらに、性成熟の時期に(体がぐんと大きくなる時期に)板が大きくなることから、異性を惹きつける飾り(ディスプレイ)の要素もあったのではないか、といったことを矢継ぎ早に発表してきた。

 林さんが乗った「骨の化石を切る」研究の潮流は、90年代から2000年代初めごろに確立されたものだが、はじまりはというと20世紀なかばだという。

「アンプリノの法則っていうのがあるんです。イタリア、トリノ大学のアンプリノという研究者が、骨の微細な組織の違いは成長の違いをあらわしているはずだと言い始めたんです。はじめは組織を見ても、その模様が何をあらわしているのかっていうのはあまりよくわかんなかったわけです。でも、それは成長と関係あるはずだって言い始めた。論文が出たのは1947年です。それに注目したのが、元パリ大学教授で今もご存命のアーモンド・リクレ博士です。彼が、今の骨化石組織学のドンです」

 どうやら、「ぶった切る」タイプの研究は、欧州に源流があるらしい。今は、リクレ博士の弟子たちの世代が研究の重鎮となっている時代だが、それらもドイツ人やフランス人が多いそうだ。もちろん、恐竜研究の本場ともいえる、アメリカでもジャック・ホーナーのような大物が初期から興味を示し、関わり続けている。

手前はステゴサウルスの化石。(写真クリックで拡大)

本誌2014年10月号でも恐竜の特集「白亜紀の王者 スピノサウルス」を掲載しています。Webでの紹介記事はこちら。フォトギャラリーはこちらです。ぜひあわせてご覧ください。