レントゲンというのは医療の世界でも古くから使われている透視法だ。しかし、21世紀の今、もっと優れた手法が、化石研究の現場でも使われるようになっている。林さんも、最初から板を切ったわけではなく、現代的な「破壊しない透視法」を使った。

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「当時のレントゲンで分かるのは、2次元の情報です。また、ひとつの断面で切っても、やはり2次元ですよね。でも、血管っていうのは3次元に張りめぐらされてるものだし、最初は太くても、だんだん細くなっていくし、そういうのをちゃんと調べないといけないと思ったんです。それで、僕はマイクロCTっていう工業用に使われている解像度の高い装置を使って、数10マイクロメートルの単位で、血管がどうなっているのか世界ではじめて見たんです。すると、板の中にはやはり血管のような空洞が張り巡らされていたんですよ。でも、その空洞は、ただのひび割れかもしれないですよね。ですので、今度は板を徹底的に切り刻んで詳しく内部の組織を調べたんです」

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 林さんが最初に切ったのは、国立科学博物館が所蔵する、日本で唯一、レプリカ(複製模型)ではない本物のステゴサウルスだ。大人になる手前の亜成体だと言われている。この個体だけで、板の中に血管が張り巡らされていると分かっても、まだ心許ない。そこで、林さんは、日本を飛び出てあちこちのステゴサウルスを研究する旅に出る。

「様々な博物館が研究に協力してくれました。アメリカのデンバー自然科学博物館、イェール大学、ユタ大学、スイスのアータル博物館、国立科学博物館を入れて、5つの博物館ですね。それで、結論としては同じで、板には複雑な血管ネットワークが張り巡らされていることが分かりました」

 こういった証拠から、板が放熱に使い得たという可能性が増してきた。

 同時に「防御説」についても、かなりのことが分かった。

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