第115回 スルタンを虜にしたパレスチナのお菓子

シャディ・バシィさん。2002年に初来日。イタリア料理などの経験を持ち、料理人として約20年のキャリアを持つ。様々な平和活動にも携わっている

 調べてみると、なんと東京にパレスチナ料理の店があることを発見! 不幸な対立を抱えるパレスチナとイスラエルだが、イスラエルお菓子を探検済み(第7回第8回参照)の隊としては、パレスチナの食に迫らないわけにはいかない。さっそく、お店のある神田に繰り出した。

 お店の名は「アルミーナ」。オーナーシェフはシャディ・バシィさん、日本人女性と結婚、4年前に店を開いた。「こちらにどうぞ」と席に案内され、まず出てきたのは赤いジュース。ザクロのジュースだという。

 「パレスチナではザクロを料理によく使うんです。ソースにしたりザクロ酢を使ったりね。デザートではよくソースに使いますね」。甘酸っぱい異国のジュースで喉を潤しながら、パレスチナのお菓子について聞いてみる。すると、「パレスチナのお菓子といったら、とにかく『クナフェ』に尽きますね」と明快な一言。

 「あれ? クナフェって聞き覚えが」と思った探検隊。そう、以前イスラエルのお菓子探検に登場したお菓子なのだ。シャディさんにもその話をすると、「イスラエルは1948年に出来た国ですよね。クナフェはそれよりずっと前からあるお菓子なんですよ。パレスチナがオスマン帝国に支配されていた頃から親しまれてきたお菓子です」と教えてくれる。

 クナフェは山羊のチーズを使ったチーズケーキだ。18世紀のオスマン帝国のスルタン(君主)の大好物で、帝国内の様々な地方に出向くたびにこれを食べまくったらしい。その中で、「うむ、これが最高じゃ」(といったかはわからないが)と、「一番美味しい」というお墨付きを得たのが、パレスチナの西岸地区北部の街ナブルスのクナフェ。なんでも、ここの山羊チーズが絶品らしいのだ。以来、クナフェはナブルスのものが最高とされているそう。

シャディさんにもクナフェを作ってもらった。「本当は大きな型に入れて作るんですけどね」といいながら、お店で使っているのは小ぶりの金属の器。これにまずオレンジ色のギーを塗る(写真左)。ギーはもちろんハラルフード(イスラムの教えにのっとり作られた食品)のもの。牛の乳を使ったギーだったが、「牛の飼料にも使っていいものといけないものがあり、日本で使うビール(アルコール)や豚由来の油脂などは使ってはいけないんです」とシャディさん。鉄板やグリルで火を入れた後、右のようにひっくり返してナッツをかけたら出来上がり!