仏像梨から考える、果物はやっぱり見た目?

(写真提供:Fruit Mould Company)

 見た目に対するこだわりは、必然的に良し悪しの基準を生む。つまり一部の果物や野菜が、ほかのものよりもすぐれた外見を持っているとみなされるようになるのだ。そして真っ先に人々の嫌われ者になったのが、曲がったキュウリだ。キュウリはとくに変形しやすい野菜で、曲がったものは日本でも「曲がり果」などと呼ばれる。授粉に問題があったり、栄養が不足したり、生育条件に不備があると、キュウリは指で突かれたダンゴムシのようにくるりと丸まっていく。

キュウリ矯正筒を開発した「鉄道の父」

 曲がったキュウリは、少なくとも古代中国のころから人々の悩みの種だったようで、彼らはキュウリの先端に石をぶらさげて、下に引っ張ることで果実をまっすぐに伸ばすのがよいと考えていた。古代ローマ人は、空洞になった植物の茎の中で育てることで、キュウリが曲がるのを防ごうとした。

 ヴィクトリア時代のイギリス人は、ガラス製の筒を使った。筒の大きさはさまざまで、最大で60センチまであったという。この筒の中にまだ小さい果実を差し入れて、スッとまっすぐに伸びたキュウリに仕上げる仕組みになっていた。

 このキュウリ用ガラス筒を発明した技師のジョージ・スティーヴンソン(1781~1848年)は、世界で初めて蒸気機関車を使った鉄道を実用化したことで知られ、「鉄道の父」とも呼ばれる人物だ。スティーヴンソンはどうやら、まっすぐで薄くスライスしたキュウリが好みだったようで、ほかにもキュウリのスライサーを発明(あるいは改良)している。

 キュウリ用ガラス筒の仕組みは、洋梨の仏像に使われる型とよく似ている。洋梨の場合も、まだ小さい果実を型に入れて固定すると、果実が大きくなるにつれ、内部の空間を満たして仏像の形になっていく。日本の四国にある農家は、20年ほど前からこれと同様の技術を用いて“四角い”スイカを作っている。ガラスの箱に入れられたスイカは、平均18日間かけて、丸から四角に変形していく。ただし欠点は高価なこと。四角いスイカの価格は丸いスイカの3倍にもなる。