第8回 眠気に打ち克つ力 その2 ―米国学会が若者に“寝坊のススメ”

 この試みは、米国ロードアイランドの私立校に通学している9-12年生(日本の中学3~高校3年生に相当)を対象に行われた。2カ月間にわたって始業時間をそれまでの午前8時から8時半へと30分遅くしたのだ。親の同意が得られた201名の学生が試験に参加している。

 その結果、参加した学生の睡眠時間は試験前の平均7時間7分から7時間52分へと45分長くなり、授業中の眠気が顕著に減り、集中力が上がるようになったのだ。30分寝坊できるようにしただけで、なぜ睡眠時間が45分長くなったのか理由は明らかでないが、授業中の居眠りが減ったため早い時間帯に眠気が出るようになったのであろう。

 実は、参加した学生には更に特筆すべき変化が見られたという。始業時間を遅らせることで抑うつ感や倦怠感が改善し、健康に対する不安を訴えることが少なくなり、学習や課外活動へのモチベーションが高まったのだ。逆に言えば、思春期の夜型体質のために睡眠不足に陥り、その結果、眠気だけでなくココロと体にさまざまな悪影響を蒙っている若者が多いことを如実に示した結果であった。

 さて、お父さん、今回のお話し如何だったでしょうか。「言い分は分かった。しかし夜更かしを正当化されたら困る、ウチの子には黙っとこ。」 仕方がありません……。でも拳ではなく少し優しく叱ってあげてください。いや、気味悪がってかえって眠れなくなるか。

つづく

『8時間睡眠のウソ。
日本人の眠り、8つの新常識』

著者:三島和夫、川端裕人

睡眠の都市伝説を打ち破り、大きな反響を呼んだ三島和夫先生の著書。日々のパフォーマンスを向上させたい人はもちろん、子育てから高齢者の認知症のケアまでを網羅した睡眠本の決定版。睡眠に悩むもそうでない方も、本書を読んでぜひ理想の睡眠を手に入れてください。
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三島和夫

(イラスト:三島由美子)

三島和夫(みしま かずお)

1963年、秋田県生まれ。秋田大学大学院医学系研究科精神科学講座 教授。医学博士。1987年、秋田大学医学部医学科卒業。同大助教授、米国バージニア大学時間生物学研究センター研究員、米国スタンフォード大学医学部睡眠研究センター客員准教授、国立精神・神経医療研究センター睡眠・覚醒障害研究部部長を経て、2018年より現職。日本睡眠学会理事、日本時間生物学会理事など各種学会の理事や評議員のほか、睡眠障害に関する厚生労働省研究班の主任研究員などを務めている。これまでに睡眠薬の臨床試験ガイドライン、同適正使用と休薬ガイドライン、睡眠障害の病態研究などに関する厚生労働省研究班の主任研究者も歴任。『8時間睡眠のウソ。日本人の眠り、8つの新常識』(川端裕人氏と共著、集英社文庫)、『睡眠薬の適正使用・休薬ガイドライン』(編著、じほう)などの著書がある。近著は『朝型勤務がダメな理由』。