第8回 眠気に打ち克つ力 その2 ―米国学会が若者に“寝坊のススメ”

 この問題について、ごく最近米国から興味深い話題が届いた。有力な学術団体の1つである米国小児科学会がティーンエイジャーの登校時間について画期的な声明を出したのである。要約すると内容は次のようなものだ。

米国小児科学会の声明
1)学業と心身の健康を維持するためには毎日8.5~9.5時間の睡眠時間が必要で、睡眠不足を昼寝や週末の寝坊で穴埋めするのは無理である。
2)思春期は人生で最も体内時計が夜型化する年代なので、(あくまで平均だが)23時前に寝て、朝8時前に目覚めるのは難しい。
3)したがって睡眠時間を確保するためには現在の一般的な登校時間である朝8:30は早すぎるので、もっと登校時間を遅くするなど工夫が必要である。

 なんと!早寝早起きではなく寝坊のススメである。誤解されては困るので再度繰り返すが、夜更かしを薦めているのではない。生理的に早寝早起きが難しい年代であるから、努力だけでは限界がある、起床時刻が早いとどうしても睡眠不足になる、では制度変更で対応してあげよう、ということなのだ。

 この声明を読んで、「今更遅いわい! 自分の学生時代に言ってほしかった!」とうめき声を上げた方も少なくないはず。勉強やスポーツで忙しいのならやむを得ないが、生理的にマッチしない登校時間のために睡眠不足になって授業中寝ているのでは本末転倒である。米国には登校時間が朝7時前の進学校もあるそうで、いくら何でも無茶である。小児睡眠学の専門家は登校時刻を9時にすることを薦めている。

 さすが米国、提言をするための実証研究もすでに行われており、始業時間が早いことにより学業成績の低下、メンタルヘルスの悪化、通学中の交通事故の増加などさまざまな問題が生じることが明らかになっている。そこで次のステップとして、始業時間を遅くすることでこれらの問題が改善されるのかチャレンジした学校があった。その結果を紹介しよう。