番外編4 ヨウスコウカワイルカの二の舞を防げ

 要人の発表や発言が一通り終わって、質疑応答の時間になると、聴衆席から次々と質問が飛んだ。主に学生さんたちである。

「研究会を傍聴して、オオサンショウウオに興味を持ちました。でも大学生は、ボランティア活動しようにも、カネがない。もっと学生にサポートを!」

「いや、これからはコンサベーションがキャリアになる時代だ。情熱ある学生が、自然保護の道に入っていくべき」

「こんなふうに先生や、高いレベルの人達に意見できるのは初めて。CGSについては知らなかった。家族や友達に伝えるところから始めたい。しかし、学生はお金がないんですよお。何とかしてください」

 なにか、具体的な事情は知らないが、学生さんたちの熱意と、苦境が同時に伝わってくるコメントが相次いだ。

 なにはともあれ、日程を終えた田口さんは言った。

「JGS(日本のオオサンショウウオ)で培った、野生の繁殖生態や、飼育・繁殖のノウハウなどこれからも、多くの伝えるべきことがありますね。日本での保全活動や調査研究、飼育下繁殖の技術が世界でも十分に通じるという可能性を感じました。それと、ベッキーたち、ロンドン動物園のスタッフは、技術面だけでなくて、オオサンショウウオを文化にする、というのも大事な点だと思っているみたいです。キャラクター化してみたり、日本的なことをやっていますね」

ロンドン動物園のマスコット(左)。中国でもゆるキャラ化?(右)(写真クリックで拡大)

 オオサンショウウオという巨大な両生類をめぐって、少し情報を深く掘ってみると、すぐに話題は世界レベル・世界史レベルになる。CGS、チュウゴクオオサンショウウオは、現在進行形の大きなトピックであり、田口さんらハンザキ研の関係者はこれからも、なにかとあてにされていくに違いない。

おわり

栃本武良(とちもと たけよし)

1941年、東京都生まれ。NPO法人日本ハンザキ研究所所長。東京水産大学卒業後、生物科の教諭を経て、姫路市立水族館建設準備室着任。 昭和50年よりオオサンショウウオの生態調査を始める。 平成6年から姫路市立水族館長を11年間務め、退職後、日本ハンザキ研究所を設立。『大山椒魚』(解説、ビブロス)、『生物による環境調査事典』(編著、東京書籍)、『環境保全学の理論と実践3』(共著、信山社サイテック)、『これからの両生類学』(共著、裳華房)などの著書がある。
日本ハンザキ研究所のホームページhttp://www.hanzaki.net/

川端裕人(かわばた ひろと)

1964年、兵庫生まれ。作家。98年、小説『夏のロケット』で第15回サントリーミステリー大賞を受賞。少年たちの川をめぐる物語『川の名前』、自身の体験を元にした『PTA再活用論 ──悩ましき現実を超えて』、感染症制圧の10日間を描いた小説『エピデミック』(角川文庫)など、多岐のジャンルにわたり多数の著書がある。近著は学校の「いま」と家族、地域の「在り方」をリアルに描いた長編エンタテインメント『ギャングエイジ』(PHP研究所)。
著者自身によるブログは「リヴァイアさん、日々のわざ」。ツイッターのアカウントは@Rsider