番外編3 チュウゴクオオサンショウウオの保護に日本の技術を活かす

 郷に入らば郷に従えというのは、旅の基本。今後現地でオオサンショウウオの保護を行っていくためには、こういう場が必要だとも言い含められていた。しかし、アルコール度数と量は、命に関わる水準で、勧められてもなんとか誤魔化してやり過ごすしかなかった。魏教授がかわりに飲んでくれたり、ソフトドリンクの缶にこっそり移し替えたり、その場しのぎを繰り返した。自分はともかく、田口さんは1滴も飲めない体質なので、危機感は相当高かった。本当に、ここの人たちは酒に強い! と思いきや、トイレに行くと、先に来た人の吐瀉物の臭いに満ちているのである。本当に、誰が得してるんだろう、と思う習慣であった。

夜の打合せの様子と、必須だったソフトドリンクの缶……。(写真クリックで拡大)

 やっとお開きになって(誰かがすべてのお酒を飲み干した、ということだ)、店のメニューが書かれた窓ガラスを見た。そこにはしっかりとこのような文字があった。

 娃娃魚 888元/斤

 中国の1斤は、500グラムだそうだ。ここは産地なのに、北京での価格980元よりも、1割ばかり安いだけ。換金価値の高い商品が乏しい土地で、オオサンショウウオ養殖が重く見られる所以だった。

(写真クリックで拡大)

つづく

栃本武良(とちもと たけよし)

1941年、東京都生まれ。NPO法人日本ハンザキ研究所所長。東京水産大学卒業後、生物科の教諭を経て、姫路市立水族館建設準備室着任。 昭和50年よりオオサンショウウオの生態調査を始める。 平成6年から姫路市立水族館長を11年間務め、退職後、日本ハンザキ研究所を設立。『大山椒魚』(解説、ビブロス)、『生物による環境調査事典』(編著、東京書籍)、『環境保全学の理論と実践3』(共著、信山社サイテック)、『これからの両生類学』(共著、裳華房)などの著書がある。
日本ハンザキ研究所のホームページhttp://www.hanzaki.net/

川端裕人(かわばた ひろと)

1964年、兵庫生まれ。作家。98年、小説『夏のロケット』で第15回サントリーミステリー大賞を受賞。少年たちの川をめぐる物語『川の名前』、自身の体験を元にした『PTA再活用論 ──悩ましき現実を超えて』、感染症制圧の10日間を描いた小説『エピデミック』(角川文庫)など、多岐のジャンルにわたり多数の著書がある。近著は学校の「いま」と家族、地域の「在り方」をリアルに描いた長編エンタテインメント『ギャングエイジ』(PHP研究所)。
著者自身によるブログは「リヴァイアさん、日々のわざ」。ツイッターのアカウントは@Rsider