番外編3 チュウゴクオオサンショウウオの保護に日本の技術を活かす

 さて、野生由来のCGSには、たくさんの調査項目がある。

 まず、魏教授の大学院生たちは、巻き尺や電子ノギスを使って様々な部位を測定した。魏教授は分類学が専門で、形態的な違いから地域個体群を識別できないかと考えている。

 一方、ロンドン動物園から指示を受けているベッキーは、組織採集用の綿棒で口の中や、皮膚を何度か拭き取って、サンプルを採った。

 そして、われらが田口さんは、左前肢のすぐ後ろ、肩のあたりに注射器を突き刺して、識別用のタグを体内に打ち込んだ。注射跡には水がつくと固まる医療用の瞬間接着剤を垂らして、傷口をふさぐ。日本のフィールドで新たな野生個体を見つけるたびにしているのと同じ方法だ(日本では、当然、文化庁の許可を得ている。念のため)。

 田口さんがやると、一連の作業が流れるように終わる。しかし、魏教授の学生さんや、漁政局の人が試しても、体をくねらせてじっとしていてくれない。押さえる場所や、力加減の按配にコツがあるようで、田口さんは丁寧に教えていた。今後、魏教授たち研究者も、養殖場の人も、漁政局も、同じことをしなければならなくなる可能性がある。

田口さんが指導。

 野生の個体がほぼいない以上、飼育されているものを仮想の野生個体群とせざるをえない。野生の遺伝子プールと見立てて、その多様性を保全する発想だ。また、銅仁市では、梵浄山自然保護区に繁殖施設、保護施設を作る計画があるので、将来的に野生由来のものはそちらに移すこともありえる。オオサンショウウオは、それだけ長寿の生き物だ。