ぼくは、尋常ならざる雰囲気に圧倒され、背筋が凍りつきました。

 それでもなんとか、すくむ足を前に踏み出して、キッチンの方へと向かいました。

 床下へ続く階段から、ジュディが半分体を乗り出して、こちらを振り返りながら「はやく! はやく!」と手招きしていました。

 その直後、ぼくのすぐ前を走っていたジムが、突然、雷で打たれたかのように動かなくなりました。

 ジムは、両手で頭を抱えながら、震える声を絞り出すようにして言いました。

「ああ……私のシラカバたちが……」

 何が起きたのかと、ぼくはとっさにジムの肩越しにのぞく窓の向こうを見つめました。

 すると、そこには……悪夢が現実になってしまったかのような、信じられない光景が広がっていました。

 斜面の上に、凛とした姿で並んでいた、あの美しいシラカバの木立。

 その木々が、すべて真ん中からへし折られ、気絶しているかのようにうなだれていたのです。

 逆さまになった枝々が、なすすべもなく、ただ風に揺られている姿は、見るからに痛々しくて、思わず目を背けてしまいました。

 ジムもまた、その場で下を向き、首を何度も横に振りました。

 あまりのショックに、逃げる気持ちも消え失せてしまったのかもしれません。

 ぼくは、落ち込むジムを前に、どうしたら良いのか分かりませんでした。

 とにかく、スタジオが吹き飛ばされるのではないかと思い、自分たちの身に迫る危険はないかと、周囲の物音に耳をすましました。

 しかし、それ以上、風が強くなる気配はありませんでした。

 むしろ、あの恐ろしい風の音が徐々に弱まって、急に静かになっていくのを感じました。

 その静けさもまた、不気味でした。

 次の暴風がいつ襲ってくるのかと、油断できません。

 いつでも地下に駆け込めるように身構えながら、じっと耳をすまし続けるしかありませんでした。

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