叩きつける雨の強さに、窓はまるですりガラスのようで、対岸の森はもちろん、小川の様子も、はっきりとは見えません。

 かろうじて、目の前に生えている、直径 40センチほどの白い幹を持つ広葉樹が、髪を振り乱すかのように、枝を激しく揺らしているのが見えました。

「これは、ひどい……どんどん強くなってる。変な嵐だ……」

 ジムは、落ち着かない様子で、渡り廊下を通り過ぎると、今度はスタジオの奥の部屋から窓の外を心配そうに見つめました。

 そのときでした。

 突然、スタジオ全体が吹き飛ばされるかと思うほどの強風が、地響きのような音とともに一気に押し寄せました。

 と同時に、いつも穏やかなジムが、「オオーッ」という低い声をあげました。

 ぼくは、次の瞬間、自分の目の前で起きた光景に息をのみました。

 窓のすぐ向こう側にあったはずの、あの広葉樹の白い幹が……猛烈な風に翻弄されて、暴れるように激しく揺れたかと思うと、その直後、こつ然と姿を消したのです。

 何が起きたのか、瞬時には理解できませんでした。

 すぐさま視線を下げると、そこには、ギザギザの断面をした幹の下半分だけが、みるも無惨な姿で残されていました。

 <まさか……!>

 それは確かに現実でした……ひとかかえもある幹の上から半分が、枝ごとどこかに吹き飛ばされていったのです。

 ぼくが唖然としていると、バキバキバキッと、さらに何本もの木が折れる音が続き、スタジオ全体にドシンという重たい衝撃が伝わってきました。

 ジュディは悲鳴を上げ、奥の部屋にいたジムは、急ぎ足でキッチンに向かいながら声をあげました。

「あぶない! 地下に逃げるんだ! ヒデも早く!」

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