番外編2 これがチュウゴクオオサンショウウオだ

 帰り道、麓の村まで辿りついた時、魏教授の大学院生に頼んで、地元の人にオオサンショウウオを見たことがあるか聞いてもらった。川で洗濯したり、日々、川辺に降りているであろう人たちだ。年齢的にはたぶん40代、50代といったところか。

 回答は、「見たことがない」「いない」だった。

 もうこの川では、見られなくなって久しいと分かった。

 北京ではふらっと訪れたレストランに、生きたオオサンショウウオがいた。しかし、いたはずの生息地には、いない。これはなにもここだけの話ではなく、中国では野生のCGSは壊滅状態だと説明を受けており、それを再確認したようなものである。 「本当に、環境はいいんですけどね。水もきれいやし、護岸もされてないから隠れ場所になりそうな大きな石もたくさんあって、日本の川よりずっとよさそう。なのに、いないんですよねぇ」と田口さんは言っていた。

 中国には川の環境が残っているのに、野生個体がいないという、日本とは別のパターンがどうやら普遍的らしいのだ。

 実はこの時点で、北京のレストランでのCGS体験から3日目である。

 ベッキーと魏教授は別行動でなにやら怪しげなミーティングに出ているらしく、我々の野生個体探索にはほとんど同行しなかった。彼女たちは重大かつ本質的な折衝ごとを抱えていたのである。

 翌日、それも午後になって、やっと問題がクリアされた。

 午後2時頃、この地区の漁政局の所長さんがやってきて、「さあ、行きましょう!」と言うと、とたんに事態が動き始めた。