さて、ぼくたちが向かうことになっていたのは、貴州省銅仁市という地方都市だ。北京からは早朝便しかなく、仕方なく1泊することになっていた。

 なにはともあれ、ホテルに向かい、荷物を置いた途端に、「調査に行きましょう」と田口さんが述べた。

 さすが、オオサンショウウオの専門家。一時たりとも無駄にしようとしない。

 しかし、どうやって? CGSがいるのは、中国南東部。北京にはいないはずではないか。動物園というスジもあるのだが、ホテル着はもう夕方だった。とっくに閉園だろう。

 などと思い巡らせていたところ、タクシーでたどり着いたのはまったく違う場所だった。

(写真クリックで拡大)

 背の高いホテルのロビー階にレストランがあった。江南料理の店で、高級なたたずまいからして、とても我々が食事をするようなところではなさそうだ。

 その入口で、「ワーワーユー?」と田口さんが聞いた。

 ぼくも、一緒にワーワーユー、ワーワーユーと唱えた。

 漢字で書けば、娃娃魚。中国語でオオサンショウウオ、つまりCGSのことだ。「娃娃」は赤ちゃんの意味だから、「赤ちゃん魚」である。赤子に似た声で泣くからと説明を受けたが、実際に泣くのかは知らない。

「日本でも、首を縛って火あぶりにするという調理法があったんですが、そのときに断末魔かなにかで赤ちゃんのようなオギャーという声を出すという話を聞いたことがありますけど。僕はそんな声は聞いたことないですね」

 と田口さんが言う。田口さんは、日本で歴代でも10指に入る(?)ほど多くのオオサンショウオに接してきた人物だ。それでも聞いたことがないというのだから、少なくとも日本のオオサンショウウオでは、あまりなさそうな話だ。

 なにはともあれ、ワーワーユーと連発しているとなんとか通じて、店員さんが、メニューをもってきてくれた。

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