番外編1 中国でオオサンショウウオは「高級魚」

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 開かれていたページには、長寿魚、と書いてあった。

 500グラムで、980元。1万5000円から2万円といったところか。

「やっぱりあるんですね、こういうの」と田口さんは感慨に耽っているようだった。

 いや、たしかに、強烈な違和感である。

 レストランのメニューに「姿」の写真付きでオオサンショウウオメニュー!

 日本でも、昔はオオサンショウウオを食べる地域があったそうだが、昭和26年に天然記念物(昭和27年に特別天然記念物)になって以降は、食用にはされていない。しかし、中国では今も健康食的な高級食材になっている。それが、メニューにでかでかと、かつ、あっけらかんと、まさに健康イメージを振りまくように描かれているわけだ。

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 ああだ、こうだと、英語で質問してみたが、あまり理解してもらえず、なにを勘違いしたのか、奥から銀色のたらいにのせた、本物のCGSがやってきた。

 あわわわ、こんなところで、中国における「本物」とご対面となるとは。

 暗い照明のせいか、日本のものよりも体色が濃く感じる。プロポーションも、ちょっと違う気がするが、素人として、この時点では言語化できなかった。

 それでも、うねうねとたらいのなかで身をくねらせるそいつを見ながら感動し、また複雑な気分にもなったのだった。

 とにかく、CGSをめぐる冒険は、レストランから、である(その夜、ぼくたちは、フツーに北京ダックを食べました)。

生きた本物のCGSを撮影する田口勇輝さん。(写真クリックで拡大)

つづく

栃本武良(とちもと たけよし)

1941年、東京都生まれ。NPO法人日本ハンザキ研究所所長。東京水産大学卒業後、生物科の教諭を経て、姫路市立水族館建設準備室着任。 昭和50年よりオオサンショウウオの生態調査を始める。 平成6年から姫路市立水族館長を11年間務め、退職後、日本ハンザキ研究所を設立。『大山椒魚』(解説、ビブロス)、『生物による環境調査事典』(編著、東京書籍)、『環境保全学の理論と実践3』(共著、信山社サイテック)、『これからの両生類学』(共著、裳華房)などの著書がある。
日本ハンザキ研究所のホームページhttp://www.hanzaki.net/

川端裕人(かわばた ひろと)

1964年、兵庫生まれ。作家。98年、小説『夏のロケット』で第15回サントリーミステリー大賞を受賞。少年たちの川をめぐる物語『川の名前』、自身の体験を元にした『PTA再活用論 ──悩ましき現実を超えて』、感染症制圧の10日間を描いた小説『エピデミック』(角川文庫)など、多岐のジャンルにわたり多数の著書がある。近著は学校の「いま」と家族、地域の「在り方」をリアルに描いた長編エンタテインメント『ギャングエイジ』(PHP研究所)。
著者自身によるブログは「リヴァイアさん、日々のわざ」。ツイッターのアカウントは@Rsider