それにしても人間とはなんと自虐的な生き物であろうか。体が必要とする睡眠時間を削ってまで活動するのは他の動物には見られない人間特有の”異常”行動である。この睡眠時間のフレキシビリティが24時間社会を支えているとは言え、“持続可能性”という視点で見ると決して褒められた行動ではない。それは週末の寝だめ、いや借金返済の実態を見れば一目瞭然だ(図)。

図:NHK生活時間調査2011から作成(イラスト:三島由美子)(画像クリックで拡大)

 この図はNHK生活時間調査(2011年)のデータから算出した日本人の平日と休日の睡眠時間の違いを示している。じーっと眺めると実に味わい深い。私などはこの図を肴にして日本酒3合は楽しむ自信がある。データを片手にチビチビやっていると、我ながらつくづく変わり者だと思う次第である。

 まず、国民全体が土日に思いっきり寝だめしているのが目に飛び込んでくる。日曜より土曜に寝だめが短いのは週休1日の人が引き下げているからで、そのような人は日曜だけで借金を返済するしかなく大変そうである。そもそも週休2日であろうが1週間分の借金を本当にチャラにできるか実に疑わしい。私たちが行った研究によれば確かに2日も寝だめすれば眠気は感じなくなるが、ストレスホルモンの増加やインスリンの低分泌など体が溜め込んだ睡眠不足の悪影響を解消するには不十分であった。そして週明けからまた借金を始める。まるで日本の国債のような状況である。

 次に主婦の睡眠を見てみよう。旦那(有職者)に比べると週末の寝だめが少ないがナゼだろう? 休みでも炊事や洗濯で寝てられないのかな?と同情しかけたが、よく見ると平日は逆に主婦の方が長い……「あなた朝ご飯できたわよ」「お帰りなさい、お風呂にする、それともお食事?」では無理な話である。さすが家庭の大蔵大臣。借金が嫌で「まだ寝てる、帰ってみればもう寝てる」を実践しているのか? 共稼ぎの主婦のデータが気になるが残念ながら見つからなかった。この種の話しは深掘りすると危険なので、次へ。

 無職の人はさすがに睡眠不足がないようだ。ものの見事に平日と週末で差がない。しかし借金のない生活が無職でないと達成できないとはなんたる皮肉であろうか。一方、同じ無職ながら学生さんの寝だめの大きさは圧倒的である。平日もそれなりに寝ているが全く足りないようだ。若くて運動量も基礎代謝も睡眠のニーズも大きいためである。「第5回:ゾウの睡眠、ネズミの睡眠」風に言えばやっぱり「燃費が悪いなぁ」。

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