第7回 眠気に打ち克つ力 その1 ―睡眠不足に強いのは勝ち組か?

 朝目覚めてから仕事をこなして16時間以上経過すると(8時起床なら深夜0時以降)、それまで踏ん張っていた注意力やパフォーマンスが一気に低下することが知られている。その低下度たるや酒気帯び運転で検挙されるレベル(血漿中アルコール濃度0.03%)を大幅に超え、その後もどんどん低下してゆく。実際の交通事故もまさにその午前0時から明け方にかけて急増する。

 普通なら危険を感じパーキングエリアで仮眠をとるシチュエーションである。しかし睡眠不足に打ち克つ力がある(と思っている)人は運転を続けてしまうのだ。ポイントは眠気を感じていなくても注意力やパフォーマンスは着実に低下してゆく点である。その夜は事故に遭会わずに逃げおおせても、長年続けていると心身機能にさまざまな問題を抱えることになる。例えば心筋梗塞や脳出血の罹患率は睡眠不足で急増する。こちらもまさに死亡事故である。

 次回は引き続き「眠気に打ち克つ力 その2」である。ごく最近、子供たちの睡眠不足に対処するため米国小児科学会からユニークな提言が出されたので取り上げたい。またその趣旨に沿って行われた教育現場での取り組みも合わせてご紹介する。そろそろお尻に火がつき始めた受験生や進学率を高めたい校長先生は必見です!

つづく

『8時間睡眠のウソ。
日本人の眠り、8つの新常識』

著者:三島和夫、川端裕人

睡眠の都市伝説を打ち破り、大きな反響を呼んだ三島和夫先生の著書。日々のパフォーマンスを向上させたい人はもちろん、子育てから高齢者の認知症のケアまでを網羅した睡眠本の決定版。睡眠に悩むもそうでない方も、本書を読んでぜひ理想の睡眠を手に入れてください。
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三島和夫

(イラスト:三島由美子)

三島和夫(みしま かずお)

1963年、秋田県生まれ。秋田大学大学院医学系研究科精神科学講座 教授。医学博士。1987年、秋田大学医学部医学科卒業。同大助教授、米国バージニア大学時間生物学研究センター研究員、米国スタンフォード大学医学部睡眠研究センター客員准教授、国立精神・神経医療研究センター睡眠・覚醒障害研究部部長を経て、2018年より現職。日本睡眠学会理事、日本時間生物学会理事など各種学会の理事や評議員のほか、睡眠障害に関する厚生労働省研究班の主任研究員などを務めている。これまでに睡眠薬の臨床試験ガイドライン、同適正使用と休薬ガイドライン、睡眠障害の病態研究などに関する厚生労働省研究班の主任研究者も歴任。『8時間睡眠のウソ。日本人の眠り、8つの新常識』(川端裕人氏と共著、集英社文庫)、『睡眠薬の適正使用・休薬ガイドライン』(編著、じほう)などの著書がある。近著は『朝型勤務がダメな理由』。