第7回 眠気に打ち克つ力 その1 ―睡眠不足に強いのは勝ち組か?

 それにしても、老若男女かなりの国民が睡眠不足の帳尻を合わせようと悪戦苦闘しなければならない社会は異様である。誰が決めたのか知らないが現代の社会スケジュールは朝型でかつ睡眠時間がやや短めの人向けである。でもそんなラッキーな人は少数派である。大部分の人は週末の寝だめで何とかやり繰りしているのが現状だ。そんな生活は、例えてみれば倒産するのが明らかなのに会社を整理できず借金を重ねる自転車操業と同じで先は見えている。

 ここで今回のお題に戻ろう。このような寝不足社会で「眠気に打ち克つ力」がある人は勝ち組だろうか? 明け方に眠気をこらえて原稿を書いている身としては思わず「イエス!」と答えたくなるが、正解は「ノー」である。それはナゼか? なまじ眠気に打ち克つ力があると、体とココロの赤信号が点灯しているのに気付かず、睡眠不足に対するリスクヘッジを怠ってしまうのだ。痛い痒いがない病気は発見が遅く手遅れになりがちなのと同じである。

 さらには変に自信を持ってしまうと、赤信号に気付いていながら「渡りきれる!」と過信して横断歩道に踏み出してしまう。信号無視をしても交通事故に遭わなければ良いのだが(編集部注:良くありません)、残念ながら睡眠不足によって健康被害に遭遇する確率は交通事故より圧倒的に高い。もっと詳しい説明は別の回に譲るとして、今回は交通事故に絡めて一例を挙げるに止める。

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