それは、ぼくがふだん使っているような35mm版のフィルムではなく、ブローニー版と呼ばれる、より大きなフィルムを使用する中判カメラでした。

 カメラの横幅が異様に長いところをみると、パノラマカメラのようでした。

 新しい機材のテストなのか、試してみたいアイデアが浮かんだのか、それとも、他になにか理由があって今日ここへ撮影に来たのかは分かりません。

 しかし、ジムでさえ、こうして何度も同じ場所に来て撮影しているところをみると、きっと、自然の撮影というものに、「これで終わり」ということはないのだろうなと思いました。

 ジムは、膝をつくようにして、低くかがみ込み、ファインダーをのぞいて構図を決めていました。

 ぼくは、撮影の邪魔にならないように、すこし後ろに下がって、その様子を静かに見ていました。

 するとジムは、ポケットから露出計を取り出して光の強さを測り、手ブレしないようにレリーズを使って、慎重にシャッターを切りはじめました。

 カシャッと言うシャッター音がしたあと、再びシャッターが閉じる音がするまでに、10秒以上の間隔がありました。

 かなりレンズを絞り込んでいるのか、今日のような曇り空では、それだけの時間をかけなければ、フィルムに十分な光を届けられないのです。

 シャッターが閉じるまでの間、ジムは微動だにせず、後ろから見ていると、まるで、ひざまずいてお祈りをしているように見えました。

 そうして、いくつかセッティングを変えながら撮影を続けていると、近くにいたジュディがつぶやくようにいいました。

「なんだか変な天気ね。とっても暗いし。雨でも降るのかしら……」

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