レイヴンウッド・スタジオに着くと、ジムは三脚と、小さなリュックを玄関近くに置いて、すでに撮影に出かける準備をすませていました。

 奥さんのジュディは、いつものように明るく、「グッド・モーニング! すぐそこだから、私も行くわ」と、嬉しそうに挨拶をしてくれました。

 この日、娘のハイジは、イリーで仕事があるらしく、スタジオにはいませんでした。

 ジムとジュディとぼくの三人で、スタジオの車止めを後にして、別棟の脇を通って、その裏に出ました。

 森の縁までやって来ると、そこから、よく踏み固められたトレイルが伸びていました。

 きっとジムが撮影のために、足しげく通い続けている道なのでしょう。

 トレイルは、ほんの少しずつ高度を下げながら、くねくねと曲がり、さらに森の奥へとぼくたちを誘います。

 すると、ほんの数分で、これまでに歩いてきた森とはまったく異なる雰囲気の場所に辿り着きました。

 谷間の底に当たるのか、ひんやりとして薄暗く、地面にはところどころぬかるみがあって、空気は湿っていました。

 そして、他では見たことのない風変わりな針葉樹が、空を支える柱のように、何本も集まって生えていました。

 なかには直径が1メートルもありそうな、立派な大木もありました。

 その木肌は、無数の筋が網の目のように走り、まるで太い麻糸を織り込んだような模様をしていました。

 落ちていた葉を拾ってみると、いかにも針葉樹といった、先の尖った細い針を集めたような形ではありません。

 それは、シダのように平たくて、扇形に広がり、細部はまるで、鱗に覆われたヘビの体のように、いくつもの節に分かれていました。

 漂う湿気と、見慣れぬ針葉樹……しかし、それ以外にも、この場所独特のある雰囲気を醸し出しているものがありました。

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