第77回 予兆
この旅で初めて、フィルムの現像を受け取ってから2日後……7月4日は、アメリカの独立記念日でした。
イリーは小さな町ですが、アメリカ中の他の町と同じように、毎年、メインストリートではパレードが行われ、夜には花火が打ち上がります。
しかし、そんなお祭り騒ぎも、遠く離れたクリフハウスでひとり過ごしていたぼくには、まったく関係のないことでした。
いつも通りの静かな朝を迎えると、その日も空一面に雲が広がっていましたが、数日前まで続いていたような冷え込みは感じられませんでした。
午前も半ばをすぎると、ぼくはレイヴンウッド・スタジオに向かって出発しました。
前日に、ジムがクリフハウスにやってきて、ランチに誘ってくれたのです。
しかも、「家の近くへ撮影に行くから、一緒に来ないか」と言ってくれました。
聞けばそこは、ジムにとってスペシャルな場所なのだそうです。
ジムと一緒に、森へ撮影に出かけられる……当然、そんな機会を逃すことはできません。
ぼくは、「もちろん行きます」と答えて、昨日からずっと楽しみにしていました。