第114回 断面はマカロニの層! クロアチアの伝統ケーキ

「ドブロ」のオーナー、川崎幸樹さん。「最初は冗談でクロアチアの知人に『日本初のクロアチアレストランをオープンしろ』といわれただけだったんですけどね」という

 エドワードさんに紹介してもらい、東京・京橋の「クロアチアレストラン ドブロ」へ向かった。オーナーの川崎幸樹さんは、02年のサッカーのワールドカップ日韓大会の際に、クロアチア代表チームのキャンプ地となった日本のホスト施設の受け入れ責任者。この縁がきっかけとなり店をオープンした。なんと、ワールドカップの翌年には脱サラをして「ドブロ」を開いたという行動派。「前からそば屋でもやりたいとは思ってたんですけどね」と微笑む。レストランオープン時には、2人の腕利き料理人を現地レストランから引き抜き、日本人シェフが厨房を取り仕切る今も彼ら直伝の料理を引き継ぐ。

 「ドブロ」には、先のストンスカ・トルタがあった。型にゆでたマカロニを入れ、上から牛乳、生クリーム、チョコレート、小麦粉、ココアパウダーを合わせた生地を流し入れオーブンで焼いたお菓子だという。「甘いマカロニなんてどんな味なんだろう」と少々おっかなびっくりでいただいてみたところ、意外! 口の中で、しっかりとマカロニが主張するものの、違和感なくチョコレート味の生地と調和している。ほんのりとした甘さで、チョコレート生地の口あたりはういろうのよう。エドワードさんがいっていた通り、スポンジケーキなどとは異なりマカロニがずっしりとお腹にたまるため、一口、二口でも満腹感が出てきた。

 同店のメニューには、その他にクロアチアでよくデザートとして食べるというクレープ「パラチンカ」と焼プリン「ロジャータ」があった。
「パラチンカは、中に砕いたクルミと黒砂糖を入れたものが、最もポピュラーですね」と川崎さん。「ドブロ」ではこの定番タイプと、ベリー類と合わせた生クリームをくるんだクレープを相盛りにしたデザートを出す。小麦粉を使ったクレープ生地はもっちりと厚手で、鉄板の美味しさ。クルミが入ったクレープにはチョコレートソースがかかっていたが、これもクロアチア定番のスタイルらしい。そういえば、同国では甘くないクレープ料理も人気があるようで、「僕のお祖母さんがよく、チーズ入りクレープを作ってくれたものです」とエドワードさんが頬を緩めていたっけ。

 一方、ロジャータはオーブンで蒸し焼きにしたプリン。全国的にポピュラーだというが、特にドブロブニクの名物菓子だという。一見、普通の焼きプリンのように見えるが、生地にはオレンジが混ざっている。スプーンですくってみると日本のプリンより手ごたえがあるしっかりとした生地で、甘くて濃厚な味かと思いきやオレンジの味が想像以上に濃く、柑橘系の香りがすっと鼻から抜ける。口の中に残った爽やかさに「ああ、地中海沿岸のデザートなんだなぁ」と実感しました。

パラチンカ。右が黒砂糖とクルミ、左が生クリームをくるんだもの。ちなみに定番パラチンカに使われているクルミは、「他のクロアチアのお菓子やパンにもよく入っている材料ですね」と川崎さん
ロジャータ。四角い形がクロアチア流。元々のレシピでは「ロザリン」というバラのリキュールを使ったことからこの名が付いたそう