ウナギの産卵を促すのだから、理想を言えばウナギ自身のホルモンを用いるべきだが、それが手に入らなかった。 というのも、生殖腺刺激ホルモンは脳下垂体で生産、分泌されるが、未成熟な個体では脳下垂体にはほとんど含まれておらず、成熟が始まってから作られる。天然では成熟が始まったウナギは捕獲できないため、ウナギのホルモンを得られなかったのだ。

 そこで、毎年、秋になると成熟個体が大量に遡上してくるサケをはじめ、コイやハクレンのホルモンを用いて 性成熟が促されるようになった。しかし、ウナギのものではないホルモンを使うため様々な問題があるという。生殖腺刺激ホルモンは糖タンパク質であるため、動物の種類によってアミノ酸配列が異なっている。ホルモンとしての作用はウナギに対しては決して十分でないだろう。ウナギにとっては異種タンパク質であるため、免疫によって排除される問題も指摘されている。

 遺伝子工学的な技術を使ってウナギ自身の生殖腺刺激ホルモンを合成して、安定的に卵や精子を得る技術の開発が進められている。すでにウナギの生殖腺刺激ホルモンを合成することに成功しており、オスについては安定して精子が得られるようになっているという。

シラスウナギの大量生産を可能にする飼料や水槽の開発を!

 メスの産卵誘導については、さらなる改良が求められるようだが、安定してウナギの受精卵をふ化させられるようになれば、次はシラスウナギまで大量に育てる飼育技術の開発が求められる。

 というのも、現在の技術ではエサを食べ始めた仔魚をシラスウナギにまで育てられる確率は5%程度でしかない。仮にシラスウナギを20トン(1億尾に相当)供給しようと思えば、20億尾程度の仔魚を飼わなければならず、大量の飼料が必要だ。田中さんがこう続ける。

「1996年にサメ卵飼料を開発できたことで、その後の完全養殖が実現したわけですが、シラスウナギを大量に生産するには大量の飼料が必要です。しかし、大量のサメ卵飼料を用意することは難しく、これに代わる代替飼料を開発していかなければならないのですが、未だ有効な飼料は見つかっていないのが実情です」

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