「グルメ番組や雑誌で霜降り肉を『やわらかくて美味しい』などと言っていますが、大間違いです。繊維質の多い大きな赤身肉を食いちぎって食べる。食べ終わった時に顎が痛くなるくらいよく噛めば肉のうま味も出るし、ちょうどいいんです。ナイフやフォーク、箸の文化もいいとは言えません。細かく切ることができるので、食いちぎる動作を妨げてしまいます。マナーの点から考えると仕方ないですが、手で持って食いちぎる縄文時代のような食べ方も取り入れるべきだと思います」

 スタジオジブリ制作の『天空の城ラピュタ』に登場する海賊の女親分・ドーラが顔の大きさほどの肉を前歯で噛みちぎって食べていたが、あの映画は食育にも適しているということか。ドーラはナイフで肉を刺していたけれども。

「赤身肉や丸干しの魚などかたくて大きいものを給食に出して、しっかり食べられたらその成果を点数にして評価を与える。そうすれば教育熱心な親は子どもにかたいものを食べさせるでしょう。それくらいの意識で取り組まないと、世間に広まってしまった美意識や価値観を改めることはできない。脳と心を鍛える知育・徳育、体を鍛える体育に加えて、顔を鍛える食育も子どもが健全に成長するためには必要だと思うのです」

 私たち成人も遅いということではない。よく咀嚼することは老化防止の効果がある。唾液の分泌をよくして消化を助けるほか、脳の働きを活発にして身体機能を高めるといわれている。それはボケの予防にもつながる。顎のかたちを変えることはできなくとも、健康な体を維持するために、かたいものを食べることは大事なのである。

 馬場さんの話を伺いながら、内心焦っていた。放置していた虫歯のせいで、ここのところかたいものを食べていないからだ。世の中はやわらかい食べ物であふれていて、日々の生活はまったく困らなかった。だが、このままでは将来困ることになる。まずは、歯医者に行かねばならない。

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おわり

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