20年代後半になって摂取カロリーが2000kcalを超え、食料が安定してくると、良質なタンパク質やビタミンなどの不足が騒がれ始める。昭和33年には当時の厚生省が、タンパク質、カルシウム、カロチン(ビタミンA)、ビタミンC、糖質、脂肪の6つの栄養素を含む「6つの基礎食品」を普及させる運動を開始。第一製薬の商品CMで「タンパク質が足りないよ~」というフレーズが流行し、昭和39年の東京オリンピックで活躍する外国人選手の体格を目の当たりにして、タンパク質摂取の重要性が説かれた。

「昭和40年代半ばには、ケンタッキーフライドチキンやマクドナルドなどのファストフードが日本へ上陸しました。普及にともなって懸念されるようになったのがカロリー過剰です。また、食品が多様化して穀類の摂取が減ったことによる食物繊維の不足が話題になりました」 実際、昭和25年に20g以上摂取していた食物繊維は、昭和末期になると15gを切っている。

 こうしたさまざまな課題に直面しながらも、カロリーと動物性タンパク質を充分に摂ることで日本人の身長は急速に伸びた。ただし、それは遺伝的な変化を伴う進化ではなく、食生活という環境に対する一時的変化にすぎず、栄養状態が悪くなれば、身長は再び低くなると馬場さんは言う。いずれにせよ、体格が良くなったのは悪いことではない。

「戦後の食生活の変化がもたらした問題は、ファストフードのハンバーガーやフライドポテトに代表されるような、やわらかい食べ物が増えたことです。それが原因で、昭和50年代頃から歯並びの悪い子どもが増えてきているんです」

 料理技術が発達し、かたい食材は潰したりするなどの加工がなされるようになった。また食料がいつでも簡単に手に入るようになり、冷えてかたくなった米を食べるようなこともない。子どもにはかたいもの、大きいものは食べにくいからと、やわらかく調理して一口サイズに切って与える。こうした食事を食べ続けていることで顎が発達せず、細くなって歯並びが悪くなってしまっているというのだ。

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