File5 食べ物と日本人の進化 馬場悠男
第2回 食べ物で顔はこんなに変わる
やがて階級社会が成立していくと、人口で陵駕した渡来系弥生人たちが支配階級となる。3世紀頃から始まった古墳時代の古墳から出てくる人骨は渡来系弥生人の特徴を持っているし、平安時代の源氏物語などの絵巻に登場する貴族たちの顔がのっぺりとしているのも、渡来系弥生人が支配階級だったことを示している。
「弥生時代から後、人骨で特徴的なのは身長の変化です。よく、歴史を遡るほど身長は低くなっていくと思われていますが、現代を除くと日本人の身長が最も高かったのは弥生時代なんです。時代を経るごとに身長はどんどん小さくなっていき、一番低かった時代は江戸から明治にかけて。弥生時代に平均が163cmあった成人男性の身長は、この頃には156cmまで下がっています」
これまた意外だが、稲作による農業生産の拡大で人口が増加するにしたがい、動物性タンパク質の分け前が減って栄養的に偏りが出たため、体がその状況に適応していったと考えられる。戦乱が終わって太平の世となった江戸時代は人口が約1200万人から3000万人を超えるまでになったので、その現象も加速したのだろう。
「江戸時代にはもう一つ、おもしろい特徴があります。ヒトの骨を観察、計測して集団ごとの特徴を区別したり、比較したりするのが私の研究ですが、江戸時代の人骨を調べているうちに、庶民の顔は幅が広く顎もしっかりしているのに、上流階級は顔が細長くて顎の小さな人が多いことがわかったのです」
その原因こそ、食べ物にあるのだと馬場さんは話す。

「日本の食の未来」最新記事
バックナンバー一覧へ- File8 食べる喜び 中川明紀
- 最終回 小さい頃から大好きだった祖母の手づくりコンニャク 後編
- 最終回 小さい頃から大好きだった祖母の手づくりコンニャク 前編
- File7 日本の食品ロス 井出留美
- 第3回 年間500万トンを超える食品ロスを減らすには
- 第2回 食品ロスを助長する根深い日本の食品消費文化
- 第1回 コメの生産量と同量の食品が日本で廃棄されている
- File6 日本発、次世代の緑の革命 芦苅基行
- 第3回 食料危機を救う緑の革命はまた起きるのか
- 第2回 なぜイネで次の緑の革命を目指すのか
- 第1回 組み換えと異なるもうひとつの遺伝子技術
- File5 食べ物と日本人の進化 馬場悠男
- 第3回 「病気を生む顔」になる食べ物とは
- 第2回 食べ物で顔はこんなに変わる