ニホンウナギの減少はヨーロッパウナギの輸入が一因?

 だからこそ海外から生きたウナギの輸入は慎重にならなければならないわけだが、ニホンウナギはすでに輸入感染症の影響を受けているのではないかと良永教授は推測する。

「文献を調べてみると、1969年に養殖されているウナギにエラ腎炎が発生して、大きな被害をもたらしました。さらに、1971年に赤点病が発生しています。エラ腎炎については由来は不明だと考えられていますが、ヨーロッパウナギが初めて輸入されたのが1969年であることを考えると、両方ともヨーロッパからもたらされたと推測できますが、これはあくまでも可能性の一つです」

(画像提供:良永知義)(画像クリックで拡大)

 エラ腎炎、赤点病ともに低水温で発生する感染症であるため、水温を高められるハウス養鰻が普及して以降は養殖ウナギでは終息したように見えるが、天然のウナギにまで広まっていたら、冬の低温期に発症していても何ら不思議はない。実際、天然ウナギの漁獲量は1970年を境に急激に減少しているわけで、1969年に輸入されたヨーロッパウナギを介して日本に持ち込まれた感染症(エラ腎炎、赤点病など)が、ニホンウナギ減少の一因になっている可能性は否定できないだろう。

 残念ながら、これまで輸入感染症の関連を調べた研究報告はまったくとっていいほどなかったという。今後、海外から生きたウナギの輸入が増大していくなら、魚病学の観点でもニホンウナギの減少を真摯に研究していかなければならない。

つづく

斉藤勝司(さいとう かつじ)

サイエンスライター。1968年、大阪生まれ。東京水産大学(現東京海洋大学)卒業後、輸入代理店勤務を経て、フリーランスのライターに。最先端科学技術、次世代医療、環境問題などを取材し、科学雑誌を中心に執筆活動を行っている。著書に『寄生虫の奇妙な世界―寄生…驚きに満ちた不思議な生活』『イヌとネコの体の不思議: ひげの役割、しっぽの役割とは?』(誠文堂新光社)、『がん治療の正しい知識―22人の名医・研究者に聞いた』(エクスナレッジ)、『群れるいきもの』(宝島社)、『教えて!科学本 今と未来を読み解くサイエンス本100冊』(共著、洋泉社)などがある。

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