第6回 致死率30%の新興ウイルスが日本に定着している!

 また、国際貢献として、ナイジェリアのフィールドに力を入れている。

「──西アフリカではラッサ熱が蔓延化状態になってます。ネズミが媒介するんです。乾期になるとブッシュから人里に出てきて、穀物とかの倉を汚染するんですよ。尿とか、死体とか、あるいは噛みついたりっていうのもあって。西アフリカ全体で毎年10万人以上が感染して、5000人以上の方が亡くなってます。ところが、ナイジェリアのある地域では、発症した半分以上の方が亡くなるんですよ。それがなぜか知りたい。その地域で流行しているウイルスが、強毒性の株なのか、あるいはその地域の人に遺伝的な原因があるのか。あるいは診断がすぐつかないから治療が遅れてなのか。その辺をはっきりさせたいんですよ」

「──フィールドとしているナイジェリア南東部地域では毎年ラッサ熱の患者さんが100人以上出ると。まあリバビリンっていう抗ウイルス剤は一応ラッサ熱には効くんですが、それもあまり効かないと。地元にも結構大きな病院があるんですが、そこでは診断ができなくて、ラゴスっていう大きな町に運ぶと、2週間ぐらい検査に時間がかかるんです。2週間たつと、もう亡くなってるか、回復してるか、どっちかなんですよ。それではちょっと問題なので、早期診断ができないかと、今一緒にやってるんですけれども」

(画像提供:安田二朗)(画像クリックで拡大)

 ここまで来ると、ウイルス学にとどまらず、病気の原因を広い視野で見つめ、致死率を高めている原因を見定める疫学研究者にも近い趣を感じられる。また、診断の態勢を整えるための仕事など、国際協力事業としての側面もある。ナイジェリアの病院で、当日いきなりセミナーをしてほしいと言われウイルス学の知識を伝えた時の写真を見せてもらったが、現場の熱意が見えてくる。

 安田さんは今、ナイジェリアでの状況にウイルス学的な仮説を持っている。

「実は、未知の病原体が、いるんじゃないかと思ってます。ずっとラッサ熱だということになっていましたけれど、実はその地域でラッサだと診断されるのは2割だけなんです。じゃあ、残りの8割は何なんだと。検査システムに問題があるっていうのは大きな理由かもしれないのですが、それ以外に、ラッサウイルスではない病原体による出血熱も、実はあるんじゃないかと思っています。今、大学院生が、試料の中にある遺伝子を網羅的に解析できる次世代シーケンサーを使って新たな病原体を探そうとしています」

UNTH(The University of Nigeria Teaching hospital)で急にセミナーをすることに。(写真提供:安田二朗)(写真クリックで拡大)