第3回 エボラにもエイズにもインフルエンザにも効く薬

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「長崎大学では、今、創薬研究拠点っていうのができていまして、薬剤候補のスクリーニングする機器が充実してるんです。たとえば、濱田剛先生がつくられた『DEGIMA2(出島2)』っていう創薬に特化したスーパーコンピュータがあります。要は安価なコンピュータを並列につないでつくったものなんですけども。神戸の理研にある汎用型スーパーコンピュータの「京」ですと、1日稼働させると電気代が2400万円とか。DEGIMA2で同じ処理しようとすると、3日かかるんですけど3日間の電気代3万円です(笑)。800分の1です。なので、非常に使いやすくて、コンピュータ上でこのウイルスタンパク質の特定の部分に結合するだろうと思われる化合物を薬学部の田中義正先生と探しています。東大が持っている20万の化合物ライブラリーをもとにシミュレーションして、その中から数百に絞ったものを実際に僕らの研究室で細胞系でやってみると。そういう段階です」

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 薬の開発というのは、非常に細かいステップがあって、とても時間がかかるものだと理解している。安田さんたちの抗ウイルス剤は、原理を明らかにする基礎研究が確立して、そのために役立つ化合物を探索している段階だ。思った通りに働くものを見つけても、生体への安全性をある程度確認した上で、さらに人間の被験者による臨床試験を何段階も経なければならない。来年、「できました」とばかりに出血熱の流行地に届けられるものではない。しかし、原理ははっきりしており、長い目でみて、この発想による抗ウイルス剤が世に出ることは、かなり見込みがあることだと理解できた。

つづく

安田二朗(やすだ じろう)

1966年、愛知県生まれ。長崎大学熱帯医学研究所教授。博士(理学)。1991年、北海道大学獣医学部卒業。1994年、総合研究大学院大学生命科学研究科博士課程を修了後、米国アラバマ大学、東京大学・医科学研究所を経て、2000年に北海道大学遺伝子病制御研究所助教授。2003年より、ウイルス学の研究を続けつつ、バイオテロ対策のため警察庁科学警察研究所・法科学第一部・生物第五研究室の室長として生物剤検知システムの開発に携わり、2010年より現職。2014年、「モバイル型生物剤検知システムの開発」の業績により、平成26年度科学技術分野の文部科学大臣表彰(科学技術賞)を受賞。

川端裕人(かわばた ひろと)

1964年、兵庫県明石市生まれ。千葉県千葉市育ち。文筆家。小説作品に、少年たちの川をめぐる物語『川の名前』(ハヤカワ文庫JA)、感染症制圧の10日間を描いた小説『エピデミック』(角川文庫)、数学史上最大の難問に挑む少年少女を描いたファンタジー『算数宇宙の冒険・アリスメトリック!』(実業之日本社文庫)など。ノンフィクションに、自身の体験を元にした『PTA再活用論 ──悩ましき現実を超えて』(中公新書クラレ)、アメリカの動物園をめぐる『動物園にできること』(文春文庫)などがある。サッカー小説『銀河のワールドカップ』『風のダンデライオン 銀河のワールドカップ ガールズ』(ともに集英社文庫)はNHKでアニメ化され、「銀河へキックオフ」として放送された。近著は、天気を「よむ」不思議な能力をもつ一族をめぐる、壮大な“気象科学エンタメ”小説『雲の王』(集英社)(『雲の王』特設サイトはこちら)、中学生になったリョウが世界を飛び回りつつ成長する姿を描いた切なくもきらめく青春物語『リョウ&ナオ』(光村図書出版)、本連載の「睡眠学」の回に書き下ろしと修正を加えてまとめたノンフィクション『8時間睡眠のウソ。 ――日本人の眠り、8つの新常識』(日経BP)など。
ブログ「リヴァイアさん、日々のわざ」。ツイッターアカウント@Rsider