第3回 エボラにもエイズにもインフルエンザにも効く薬

(画像提供:安田二朗)(画像クリックで拡大)

「これ、出血熱を起こすマールブルグウイルスがどういうふうに出芽するか、つまり、細胞から出てくるか、分子メカニズムとして描いてあります」

 我々の細胞は、脂質でできた細胞膜に包まれている。膜に包まれて守られているような印象を抱くが、それだけで完結しているわけではなく、膜がさらに小胞を作って、中に物を入れたり出したりする仕組みがある。このような小胞ができるメカニズムを、ウイルスは利用しているというのである。

 ならば、この小胞を作る部分を阻害してやればどうか。ウイルスの出芽を防ぐことが出来るのではないか。それが安田さんの基本的なアイデアだ。

 もっとも、心配すべき部分もある。細胞の活動そのものを阻害するなら、人体への影響もあるのではないか、と。

「たしかに、これまでの抗ウイルス剤、たとえばHIVに使われている薬(逆転写酵素阻害剤)とか、細胞の通常の活動の邪魔をしてしまうので、副作用が強いということはあったんです。でも、エンベロープ・ウイルスの出芽にかんしては、細胞側ではなくて、ウイルス側が細胞をだますところを止めてしまえばいいんです。ウイルス側に、細胞の特定の場所にくっつくモチーフ(構造)があるんですが、そこを別のちっちゃい低分子化合物でふさいでしまえば結合できなくなるので、抗ウイルス剤としてそれは有効なんですね。ターゲットがウイルス側であれば、そんなに副作用も強くない可能性が高いんです」

 では、目下、この原理による抗ウイルス剤の開発はどの段階にあるだろう。