第3回 エボラにもエイズにもインフルエンザにも効く薬

主な新興ウイルス感染症。(画像提供:安田二朗)(画像クリックで拡大)

 エンベロープ・ウイルスというのは、膜を持ったウイルスだ。それが安田さんの長年の研究テーマだった。膜を持つという共通の特徴から、見えてきたものとはなんだろう。

「膜をかぶっているウイルスには、ヒト免疫不全ウイルス (HIV)などのレトロウイルスですとか、エボラやマールブルグなどの出血熱ウイルス、それにインフルエンザウイルスなど、多くのものがあります。僕が大学院で最初に研究していたのはインフルエンザウイルスで、そのあと、HIVなどのレトロウイルスです。増殖機構に興味があって、ウイルスが細胞の中でどうやって増えるのか分子メカニズムを解析していたんです。それが、実はですね、エボラウイルスとか出血熱のウイルスもレトロウイルスと同じメカニズムを使って細胞から外に出てくるというのがわかってきたんです」

 膜を持っているウイルスが増殖する仕組みは似ている。

 これがたとえば、動物で哺乳類の繁殖の仕方が似ている、というなら分かる。進化の歴史の中で、同じ仕組を持ったものが分岐してきたのだから。しかし、エンベロープ・ウイルスの場合、DNAウイルスも、RNAウイルスもあって、系統的には必ずしも同じではない。そもそも、ウイルスは変化が速く、また、宿主との遺伝子のやりとりがあったり、従来の系統の概念もそのままでは適用しにくい。それでも、膜を持つウイルスが、感染した宿主細胞の膜小胞の形成にかかわる仕組みを利用して増殖するという点は共通なのだ。