第2回 エボラ出血熱はどのように広がるのか

10年以上のエボラウイルス研究歴をもつ安田二朗さん。(写真クリックで拡大)

「いわゆる先進国の論理でいえば、こんなに広がる前に断ち切れるはずなんです。接触感染しかしない感染症で、空気感染とかはしないものなので。よく、宇宙服みたいなのをつけた医者がでてきますが、よほどでないとあそこまでは必要ないんです。せいぜいPP、パーソナル・プロテクション・イクイップメント(個人防護具)といって、ディスポ(使い捨て)のガウンを着て、手袋をして、マスクして、ゴーグルして、足袋をつけると。この程度でも感染は防御できるんです。でも、医療だけの問題ではなくて、文化習慣っていうのが圧倒的に違います」

 出血熱ウイルスが空気感染しないというのは、とても重要なことだ。

 ウイルスのような小さいものでも、空気中に漂っているものを吸い込んで感染するのは、麻疹や水疱瘡などごくごく限られたものだけだ。インフルエンザなど、よく空気感染すると考えている人がいるが、基本的にはくしゃみや咳などで飛び散ったものが体の中に入って感染が成立する飛沫感染だ。そして、出血熱の場合、感染者の血液が傷口などから入らない限り感染が成立しない。それでも西アフリカで感染が広がってしまうのは、文化習慣の影響であるというのである。

「火葬の習慣がなくて土葬するんですけれども、その前に家族の方が遺体をきれいに洗うんですよ。もちろん素手です。そういうのを止められないですよね。あと、本当に医療体制が充実してないところに行くと、教会とかが患者さんを収容する代替施設になるんです。すると、教会の方々は手袋して患者さんと接するのが失礼だとか、そういう感覚もあるみたいで、なかなか徹底されないんですね。あるいは手袋を使い回したり、下血したオムツとか使い捨てにせずに、やはり素手で洗って使い回すと。僕ら、一見、傷がないように見えても、小さな傷はいくらだってあるので、看護する側が感染してしまいます」

(画像提供:安田二朗)(画像クリックで拡大)