第113回 デニッシュはパンじゃなくて“ケーキ”だった?!

辻村直子さん。東京のデンマーク料理店に勤めた後、この世界を極めるために彼の国で修業。近々、日本で自分の店をオープンしたいと計画しているそう

「日本ではデニッシュはパンですから、朝食にもよく食べますよね。でも、デンマークで朝にヴィナボーを食べていると、『朝からそんなものを食べるの?』と目を丸くされます。あちらの人は、基本的に朝から甘いパンは食べないんです。私は好きでよく食べるんですけどね」と、デンマーク人の夫を持つ彼女は苦笑する。ヴィナボーは、朝食ではなく、コーヒータイムやちょっと甘いものが欲しいときに食べるお菓子らしい。

 辻村さんはデンマーク中部のフュン島にあるアンデルセンの故郷、オーデンセのベーカリーで修業した。昔ながらのパン作りにこだわっている店で、なんと日本の鰻屋のたれのごとく、長年に渡り、継ぎ足しながら育てた天然酵母を使っているのだという。焼き立てほやほやのパンに、そんな「歴史」までつまっているとは、デンマークのパンはタダ者ではないようだ。「日本のパンとは香りも味わいもまるで違うんですよ」と辻村さんは目を細める。

 デンマークは、1987年に有機農業生産についての法律が制定されてから、有機農業が大きく発展した国だ。そのため、スーパーマーケットでは、乳製品でも野菜でもジャムなどの加工品でも、オーガニック食品がずらりと並び、人々の生活の中に自然に溶け込んでいるのだという。こうしたことも味わいの違いに影響しているだろうと辻村さんはいう。

 「自然体であること」が身に付いたお国柄なのだろう。「パンなどの形はラフに作るんですよね。日本のパン屋では、どれもきれいに形が揃っているでしょう? デンマークではそれはあり得ない。色々な形であることで、手作り感が増して美味しさも引き立つんです」と彼女。

この辻村さんのヴィナボーは、アーモンドプードル(アーモンドの粉)を使ったフィリングをくるんでいた。ちなみに、デンマークではパンは買い置きをせず、毎日家で焼くか店で買うという