第1回 エボラ出血熱と、バイオテロ対策と、

「開設当時のことは、僕も詳しいわけではないんですが、寄生虫感染症が多かったのだと思います。住血吸虫だったり、フィラリアだったり。今の時代、寄生虫感染症って、日本ではかなりレアになってきてますが、当時はまだ問題になっていたと。もちろん、細菌感染症、ウイルス感染症もですね。それが今では、非感染症、たとえば成人病ですとか生活習慣病と呼ばれるものが発展途上国で出てますので、そういう意味ではいわゆる国際保健の分野も今、ここの研究所にはあるんです」

 寄生虫というと、たしかに最近ではあまり聞かなくなった。学校でのぎょう虫検査などでも、陽性になる子はほとんどいない。それでも1964年生まれのぼくが子どもの頃は、死に至る病としての寄生虫病、たとえば日本住血吸虫病の恐怖を生々しく語った児童読み物などがごく普通に学校図書室に置かれていて、小心な子どもを震え上がらせていた。それが今では、小学生に聞いてもこの寄生虫を知っている子は少ないだろう。むしろ、ニュースで話題になるウイルス性出血熱に恐怖をおぼえたり、ファストフードばかり食べているとメタボになるぞ、とかそういう保健知識、公衆衛生知識を持っていたりするだろう。

 東亜風土病研究所が改称した背景には、時代に応じた、あるいは、先取りした、このような背景があった。

 そんな中で、安田さんが主宰するのは「新興感染症学分野」だ。取り組んでいる研究のコアな部分として以下のものがある。

・高病原性ウイルスの増殖機構の解明。
・新規抗ウイルス療法の開発。

 ここでいう高病原性ウイルスというのは、基本的には新興ウイルスのことだ。安田さんは、表を指しながら説明をしてくれた。

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