制定から50年を迎えた米国の原生自然法。生まれたままの大自然を、後世に守り伝えるという目的は、達せられたのだろうか。

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アメリカが未来へ残す原生の自然

制定から50年を迎えた米国の原生自然法。生まれたままの大自然を、後世に守り伝えるという目的は、達せられたのだろうか。

文=エリザベス・コルバート/写真=マイケル・メルフォード

 原生自然法は1964年9月3日、当時のリンドン・ジョンソン米大統領の署名により成立した。米国が誇る手つかずの自然景観を保護し、後世に伝えることがその目的だ。

 この法律が誕生した背景には、1930年代の世界大恐慌時代に米国政府が打ち出した、ニューディール政策と呼ばれる一連の経済政策があった。公共事業による雇用創出がさかんに行われ、国立公園や国有林での仕事に就いた人々も数万人に及んだ。トレイルや待避小屋、観光用の舗装道路などが次々に整備された結果、国立公園の利用者数は何百万人も増えた。

過剰な開発への懸念が生んだ保護制度

 その成功は一方で、多くの自然保護論者を不安に陥れた。雄大な自然景観の将来を案じたアルド・レオポルドらのグループは、国立公園や国有林の過剰な開発を防ごうと「ウィルダネス協会」を設立。当時の道路建設ブームを痛烈に批判する声明を出した。

 レオポルドはそれ以前、米国林野局の職員としてニューメキシコ州で働いていた1924年に、一つの成果を上げていた。上司を説得し、ヒラ国有林内の約30万ヘクタールを道路の建設できない原生地として指定させたのだ。次の課題は、連邦議会の合意を取りつけ、全国規模でこの取り組みを行うことだった。

 原生自然法は、60回を超す草案の書き直しを経て、ついに議会を通過した。この法律により、国有地に「原生自然地域(ウィルダネス・エリア)」という新たなカテゴリーが生まれたのだ。
 指定する権限は連邦議会だけに与えられ、指定地域内では樹木の伐採や鉱山開発などの営利事業はできなくなる。1964年の法制化とともに、全米に54カ所の原生自然地域が誕生した。

 ジョンソン大統領は法案に署名した後、こう述べたという。「後世の人々に軽蔑でなく、感謝とともに記憶されたければ、人間が手をつけた後の世界だけでなく、原初のままの世界を垣間見る余地を残しておかねばならない」

 それから50年の間に、公式に指定された原生自然地域の数は増え続け、現在では750カ所を超す。その総面積は米国の国土のおよそ5%を占め、カリフォルニア州の面積を上回る。
 そして現在、約30カ所の候補地が議会での承認を待っている。その承認こそは、原生自然法の制定50周年を祝う、何よりのプレゼントとなるはずだ。

※この続きは、ナショナル ジオグラフィック2014年9月号でどうぞ。

編集者から

 原生の自然を意味する「ウィルダネス」という言葉の響きには、米国の人々が大自然に抱く憧れやロマン、畏敬の念とともに、「そんな雄大な自然を擁する国、アメリカ」への誇りも、どことなく感じられる気がします。そのベースにあるのが、制定から50年を迎える原生自然法だったんですね。
 連日30℃を超す猛暑の時期に編集作業を進めていましたが、岩だらけの渓谷、静かな森、雪化粧した山々、湖畔の砂丘など、ページをめくると次々に現れる多彩な景観に、しばし心洗われる思いでした。(編集H.I)

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